浦沢直樹の「アベノマスク」猛批判集めた理由 政治的スタンスと作品は分けたほうがいい

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いわば「その表現は政治的である」という指摘そのものが、「アベノマスク」や「2位じゃダメなんですか?」以上に、イデオロギーにあふれた政治的な表現であり、安倍首相を支持するという意思表示なのである。

一方で、「浦沢作品のファンだったのに、ガッカリした」などの反応もあったが、『20世紀少年』や『PLUTO』といった浦沢氏の作品は、マンガを通して社会を描くハードな作風であり、そこには多分に政治的な表現が含まれている。

政治的な表現が嫌いなら、そもそも浦沢作品のファンにはならないだろう。それに、もし本当にファンなのであれば、作品と作者の政治的スタンスを分けて考えられるはずである。

僕自身も、子どもの頃からゲームの「ドラゴンクエスト」シリーズを楽しんでいるが、シリーズの楽曲制作を担ってきた作曲家のすぎやまこういち氏の歴史修正主義などの政治思想は受け入れられるものではない。

それでもすぎやま氏の音楽には心打たれるものがある。「作者の政治的スタンスが嫌いだから作品も嫌いになる」というなら、そもそもその作品に対して愛がないのではないか。

浦沢直樹氏のツイートは「当然のこと」

何より、浦沢直樹氏は漫画家であると同時に、この日本社会に暮らす1人の人間だ。日本社会に暮らす人間が、日本国内の政治に対して賛同を示すなり、反対するなり、なんらかの政治的スタンスを示すことは自由であり、何1つおかしいことではない。

そして、文字でもマンガでも歌でも映画でも何でもいいが、多くの表現には、本人の自覚の有無にかかわらず、何らかの社会性や政治性が含まれるものである。

もし「漫画家が政治的なスタンスを取るのはおかしい」と本気で思っているとすれば、それは本人は自覚していないが「漫画家は政治性を表現してはならないという政治性」にほかならない。

だいたい戦後日本のマンガの礎を築いた手塚治虫からして、『アドルフに告ぐ』や『きりひと讃歌』など、政治的なマンガをたくさん描いている。

漫画家が政治的主張をしてはならないなどという理屈は通らないし、漫画家が政治的な主張をしたからとたたく人たちはマンガをなんだと思っているのだろうか。もっとたくさんのマンガを読んで、広い視野を身に付けてほしいものである。

赤木 智弘 フリーライター

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あかぎ ともひろ / Tomohiro Akagi

1975年栃木県生まれ。2007年にフリーターとして働きながら『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」を執筆し、話題を呼ぶ。以後、貧困問題などをテーマに執筆。主な著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』などがある。

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