だが、これに激怒した人たちがいた。それは、安倍政権を愛してやまない人々である。いつもは安倍政権がどんな失敗を犯しても、誰かしらが「安倍政権は悪くない。悪いのは野党とサヨクと財務省と在日だ!」と発し、それに対して「そうだそうだ、安倍さんは悪くない!!」と同調してきた人たちだ。
しかし今回はどうやら勝手が違う。いつもならどんなときも安倍政権を褒めていたはずの人たちの中からも、政権批判を始める人が出てきた。いつもと状況が異なる戸惑いの中、熱心的な支持者は「いかに布マスク2枚を配ることが、すばらしい政策か。そしてそれを批判するサヨクは無知で常識知らずなのか」をツイートし続けたが、「#アベノマスク」がTwitterにトレンド入りするなど、なかなか思いどおりの展開にならない。
そんなフラストレーションがたまった彼らが、標的にしたのが偶然目についた件(くだん)の浦沢氏のツイートだった。要は浦沢氏は八つ当たりの対象にされたわけだ。
そもそも政治的主張は悪いことなのか?
それにしても不思議である。どうしてツイッターで政治的な表現をしただけで、ここまでたたく人が現れたのだろうか。浦沢氏のイラストに対して「政治的表現をするな」という批判もあったが、そもそも政治的な表現や主張は悪いことなのだろうか?
ネットスラングに「2位じゃダメなんですか?」というものがある。これは、かつて民主党が政権を担っていた頃に行われていた事業仕分けで、スーパーコンピューター「京」の開発予算を審議している中、民主党所属議員であった蓮舫氏が発した言葉である。
この言葉は、すぐに蓮舫氏に対する揶揄として使われるようになり、今でも彼女や野党を揶揄するときや、「2位」のものを語るときに使われている。僕は「アベノマスク」という言葉は、この「2位じゃダメなんですか?」と同じ意味合いを持つ言葉だと考えている。
2つの言葉には共通点がある。それは、どちらも「政権与党の政策に対する批判」であり、かつ「政治的な揶揄」であることだ。ところが、同じような言葉でも、「アベノマスク」に怒る人はいて、「2位じゃダメなんですか?」に怒る人はいない。
前者と後者で反応が異なるのは、結局のところ「その表現が政治的であること」自体が問題なのではなく、「安倍批判であること」が浦沢直樹氏を批判する人たちにとって問題なのだろう。
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