外出自粛めぐり、再燃する「安倍VS小池」バトル 休業要請で浮上する「補償要求」への不安

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(写真:共同通信)

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、安倍晋三首相は7日の緊急事態宣言で、「人と人との8割の接触削減」などの行動自粛を呼びかけた。しかし、特定業種に対する休業要請の是非をめぐり、政府と小池百合子東京都知事の対立が表面化。結果的に国民の不安を拡大させている。

3月下旬の段階で「ロックダウン(都市封鎖)」に言及していた小池氏は、安倍首相の宣言と同時に、広範で具体的な業種を対象にした休業要請を決定・公表すべく準備を進めてきた。これに政府が「待った」をかけたのが対立の原因だ。

ただ、「抜群の発信力を武器にした『小池の乱』が、政府を追い詰めている」(自民幹部)のが実態とみられている。4月9日に双方が妥協したものの、感染の拡大次第では今後も厳しいせめぎ合いが続く可能性は大きく、安倍首相の政治決断にも影を落としかねない。

調整が長引き、休業要請ずれ込み

7日深夜の緊急事態宣言発令と同時に、具体的対応をめぐって政府と小池氏の対立が表面化した。改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づき、商業施設などへ広範囲に休業を要請することに前向きだった小池氏に対し、政府は経済・社会への深刻な打撃や不安による買い占め拡大などを危惧し、「休業要請は自粛の成果を見極めてから」(西村康稔・コロナ担当相)と主張して調整が難航した。

その結果、小池氏による正式の休業要請は10日午後にずれ込んだ。感染爆発で危機的状況となっているニューヨークやパリと同様、感染爆発の危機が迫る首都・東京の対応が3日遅れとなったことについて、感染医療専門家は「数日の出遅れが、最悪の事態につながる可能性がある」と指摘。都民からも「政府や都をあてにしないで、自分の身は自分で守るしかない」との不安や不満が噴出している。

3月下旬に東京五輪・パラリンピックの延期を決定してから、急に政治の表舞台に躍り出た小池氏。安倍首相の緊急事態宣言と同時に、百貨店やホームセンター、理髪店、居酒屋など、幅広い業種・施設を対象に休業要請を決定・公表する段取りを描いていた。

これに対し政府側は、コロナ担当の西村経済再生相を前面に立て、宣言の前提となった基本的対処方針を踏まえて「国民の日常生活維持の観点から、理髪店やホームセンターは必要だ」などと待ったをかけ、調整は2日間も続いた。

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