ただ、神奈川県に隣接する静岡県御殿場市のように、独自に市内の居酒屋やバー、ナイトクラブなどに休業を要請し、一定額の売り上げ減に対する補償を打ち出した自治体も現れた。それだけに、各府県知事も政府と小池氏の駆け引きを「なおハラハラドキドキで見守っている」のが実情だ。
そもそも、小池都知事のコロナ対応は「ちょっと前までは、出遅れが目立っていた」(政府筋)との見方が多い。2月から3月にかけて、北海道や大阪府のトップが強力なメッセージを連発していた段階では、小池氏の発信はほとんど目立たなかった。
結果的に「自粛が緩んだ」と問題視された3月下旬の3連休には都内各所で花見の客があふれたが、それ以前に小池氏が強い注意喚起や警告をする場面はなかった。「それが、結果的に3月末から4月初旬にかけての東京での感染者急増につながった」(政府筋)との指摘もある。
出遅れ批判をかわすパフォーマンス
ここにきて小池氏が強い言葉と行動で「小池劇場復活」をアピールしているのも、「出遅れ批判をかわすためのパフォーマンス」(自民幹部)との批判もある。
ただ、「ロックダウンはできない」としながら事実上の封鎖に近づけようとする小池氏の強い姿勢に共感し、声援を送る都民は少なくない。日本共産党の志位和夫委員長は「8割減らせといっても無理があり、それこそ『うそ八百』になるのではないか」と政府の対処方針を厳しく批判している。
すったもんだの末、問題となっていた百貨店やホームセンター、理髪店などは休業要請の対象外とすることで妥協が成立した。百貨店は食品や生活用品の売り場以外は休業を求め、居酒屋は営業時間の短縮を要請する。
10日午後の記者会見で小池氏は「危機管理はまず大きく構えて、それから縮めていくべきだというのが私の考え」と政府との姿勢の違いを強調。そのうえで、都独自の対応として、休業要請に応じた事業者に対し、「感染防止協力金」として最大100万円を給付する方針を明らかにした。
東京の感染者数は9日に続いて10日も過去最多を更新するなど、拡大が続いている。政府が注視している東京都心部の人の集合・移動状況も「7~8割の接触制限はとても困難に見える」(政府筋)のが現状だ。首相も10日午前、極めて厳しい表情で「国民の行動自粛」を改めて訴えた。
こうした中、政府を揺さぶる小池氏とそれをなんとか抑え込もうとする首相サイドとのあつれきが勃発したことに、「トップリーダーが『人命優先か経済重視か』で対立しているように見えること自体が異常」(国民民主幹部)との批判も相次ぐ。「宣言が国民の期待通りの成果を出せなかったことになれば、まさに国民的不幸」(首相経験者)との厳しい声も出始めている。
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