専門家の予測をうのみにする人が知らない真実 専門分野や経験、学位は予測能力に関係ない

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チャールズ・ダーウィンは、人類史上、最も好奇心が強く、積極的なオープンマインドを持った人物の1人だろう。ダーウィンは自分が取り組んでいる説と正反対の事実や現象に出会うと、それをノートに書き写していた。そして、自分の説を容赦なく攻撃し、自分の考えたモデルを次々に捨て去り、すべての科学的証拠にフィットする理論にたどり着くまでそれを続けた。

ハリネズミは複雑さの背後に、自分の専門分野の枠組みに基づいた、シンプルかつ決定論的な因果関係のルールを見いだす。キツネは他の人々が因果関係だと誤解するものの中に、複雑さを見る。

そして、因果関係のほとんどは、決定論的ではなく確率的だと理解している。未知のものがあり、運も作用する。明らかに過去と同じことが起きているように見えても、正確には同じではない。キツネは、「意地悪な学習環境」の中にいることを認識する。

「意地悪な学習環境」の中では、成功からも、失敗からも学ぶのは難しい。自動的なフィードバックがない意地悪な環境では、経験だけではパフォーマンスを上げられない。より重要になるのは思考習慣であり、それは学んで身につけることができる。予測トーナメントの4年間で、キツネ的な思考習慣の基本トレーニングを1時間することで、予測の正確さを上げられることを、テトロックとメラーズの調査グループは示した。

そうした思考習慣の1つはアナロジー思考によく似ている。簡単に言うと、予測者は、問われている出来事の中身にだけフォーカスするのではなく、根底にある構造が似ている出来事のリストを作り、それによって予測の精度を高める。

100パーセント新しい出来事はめったにない。テトロックに言わせると、1つの出来事の独自性は程度の問題だ。だから、リストを作ることで、予測者は知らず知らずのうちに統計学者のように考えられるようになる。

共通性のある無関係な出来事について考えると?

腕の立つ予測者は目の前にある問題から離れ、構造的に共通性があるまったく無関係な出来事について考える。経験から得られる直感に頼ったり、専門とする1分野に頼ったりはしない。

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予測者のもう1つのトレーニングに、予測の欠点を猛烈に分析して、厳しい教訓を得ようとするやり方がある。特に、予測の結果が思わしくなかったときに実施すると効果的だ。

あらゆる機会を生かして厳しいフィードバックを得ることで、自動的なフィードバックがない「意地悪な学習環境」を、少しでも親切にすることができる。テトロックの20年間の研究では、キツネもハリネズミも、予測に成功すると自分の信念をアップデートして、さらに強化する。

しかし、予測が外れた場合、キツネは自分の考えを修正する可能性が高いが、ハリネズミはまず見方を変えない。ハリネズミの中には、自信満々の予測がひどく外れると、自分の信念を間違った方向に強化する人もいる。その人たちは、自分のそもそもの信念にさらに自信を持ち、やがて道に迷う。

テトロックによると、「自分の信念をうまくアップデートできる人は、よい判断ができる」。その人たちは、賭けをして負けたら、勝ったときに信念を強化するのと同じように、負けたロジックを受け入れ修正する。そうしたオープンマインドが、「意地悪な学習環境」の中でも正しい判断に導いてくれる。

デイビッド・エプスタイン 科学ジャーナリスト

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David Epstein

アメリカの科学ジャーナリスト。ネットメディアのプロパブリカ記者、元スポーツ・イラストレイテッド誌シニア・ライター。同誌でスポーツ科学、医学、オリンピック競技などの分野を担当し、調査報道で注目を集める。記事の受賞歴も多い。コロンビア大学大学院修士課程修了(環境科学、ジャーナリズム)。

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