専門家の予測をうのみにする人が知らない真実 専門分野や経験、学位は予測能力に関係ない

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テトロックとメラーズが率いたチームは「優れた判断力プロジェクト(GJP)」と名づけられた。2人は博士号を持った専門家を採用したりせず、1年目にボランティアを公募した。簡単なスクリーニングのあと、3200人のボランティアをチームに招いて予測を始めた。

メンバーの中からキツネ的な人たち、つまり幅広い興味と読書習慣があり、予測に関連するバックグラウンドが特にない人たちを選びだし、その人たちの予測を重みづけしてチームの予測を決めると、GJPチームはトーナメントで圧勝した。

2年目には、GJPはトップの「超予測者」たち12人から成るオンライン・チームをいくつか組み、互いに情報やアイデアを共有できるようにした。すると、GJPは他の大学主催のチームをはるかに上回る成績を上げるようになり、IARPAは成績の低いチームをトーナメントから外した。

一般から集めたボランティアが、機密データにアクセスできる経験豊かな機密情報アナリストに勝った。テトロックによると、「その差は極秘だ」(しかし、テトロックは、ワシントンポスト紙が「GJPは機密情報アナリストのチームの成績を30パーセント上回った」と報じたと教えてくれた)。

最も優秀な予測者たちは、キツネ的であるだけでなく、コラボレーション能力も高く、情報を共有し、予測について議論した。チームのメンバーは個人で予測を出さなければならなかったが、チームは全体のパフォーマンスで評価された。平均すると、超予測者のチームでは、個人の予測の精度が50パーセント高かった。

超予測者のチームは、はるかに多くの人たちの予測の平均を上回り、さらには「予測市場」も破った。予測市場とは、市場参加者が未来の出来事の予測を株式のように「取引」する市場で、人々の予測の変化によって市場価格が変動する。

各メンバーの幅(レンジ)の広さが不可欠だった

地政学的な出来事や経済的な事象の予測は複雑なので、スペシャリストのグループが必要だと普通は思う。各自が1つの領域について、深い知識を持ち寄れるからだ。しかし、実際はその逆だった。コミックの制作者や新技術の特許を取る開発者のように、不確実性を前にした場合には、各メンバーの幅(レンジ)の広さが不可欠だった。

最もキツネ的な予測者たちは、一人ひとりでも見事だったが、チームを組むとさらにパワーアップして、理想的なチームになった。彼らは一人ひとりの力の単純な合計を、はるかに上回る力を見せたのだ。

例えば、メンバーの1人、スコット・イーストマンは「1つの世界にとどまったことがない」と言った。オレゴン州で育ち、数学や科学のコンテストに出場したが、大学では英文学と美術を学んだ。これまで自転車修理、住宅の塗装、塗装会社の創業者、写真家、写真教師、ルーマニアの大学の講師などの仕事を経験し、最も変わったところでは、ルーマニア中央部の小さな町、アブリグで、市長のチーフアドバイザーを務めた。

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