幼児からの超英才教育「意外な落とし穴」の正体 成功者は早くから専門特化した人だけじゃない

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大きな成功を勝ち得たエキスパートも、やはり広い世界で生きている。ノーベル生理学・医学賞を受賞し、現代神経科学の父とされるスペインのサンティアゴ・ラモン・イ・カハルはこう言った。「(趣味や副業を持っている人たちは)遠くから見ていると、エネルギーをまき散らし、浪費しているかのように見える。しかし、実際には、エネルギーを集中させ、強化している」。

科学者やエンジニアの中で真のエキスパートと見なされている人たちを何年間も調査した研究によると、逆に自らの分野でクリエイティビティーを発揮できなかった人たちは、その狭い専門分野以外に芸術的な関心を持っていなかった。心理学者で、クリエイティビティーに関して優れた研究をしているディーン・キース・サイモントンは、クリエイティブな成果を上げる人は、「狭いテーマにひたすらにフォーカスするのではなく、幅広い興味を持っていると述べる。この幅広さが、専門領域の知識からは得られない洞察を生み出す。

これらの発見は、スティーブ・ジョブズの有名なスピーチを思い起こさせる。ジョブズはそのスピーチで、カリグラフィー(文字を美しく見せる技法)の授業がデザインのセンスを育むのに重要だったと話した。

「最初のマッキントッシュのコンピュータをデザインしているとき、すべてがよみがえってきた。大学であの授業をちょっと取ってみようと思わなかったら、マックにいくつもの書体はなかったし、可変幅フォントもなかっただろう」

意地悪な世界では「幅(レンジ)」が最高の武器になる

1979年に、クリストファー・コノリーは心理コンサルティング会社をイギリスで共同設立した。優秀な人たちがベストの成果を上げられるよう、コンサルティングをするためだ(最初はスポーツ選手を、のちに他の分野の人たちも対象とした)。年月を経てコノリーが興味を抱くようになったのは、自分の専門の外に出ると苦労する人がいる一方で、キャリアを外に広げるのがうまい人もいることだ。

コノリーの主な発見は、のちにほかの分野への移行に成功した人は、第1の専門分野を追求しながら幅広い分野のトレーニングを受け、複数の「キャリアの流れを維持していた」ということだ。彼らは「8車線の高速道路を走っていた」とコノリーは記す。

1車線の一方通行の道ではなく、彼らには「幅(レンジ)」があった。成功した人たちは、ある分野で得た知識を別の分野に応用するのがうまく、また、「認知的定着」を避けるのも上手だった。つまり、外部の経験や例を活用して、「もはや効果がない従来の解決方法」に依存する傾向を遮断していた。彼らは、昔ながらのパターンを「避ける」スキルを持っていた。問題が曖昧で、明確なルールがない「意地悪な世界」では、「幅(レンジ)」が人生を生産的、かつ効率的にするための術となる。

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