一見(いちげん)さんの心を、どう知るか
――でも、初めての一見(いちげん)の方が来たときに、そうした提案型のサービスになじませるのは、なかなか難しいこともあるのでは?
おっしゃるとおりです。当初はリピーターの方々を中心にご提案していたのです。ただ京都は初回のお客様が多いので、滞在中にどうアレンジするかを決めなければいけない。
そのときに編み出した方法は、到着してからお部屋での滞在が終わるまでに、いかにニーズを引き出すか、嗜好をつかむか。
プラットフォーム(場)を作ることも大切だと思いまして、自由参加できるお茶とかお抹茶とかに来ていただきました。そこで少し要望をキャッチボールしながら、「ああ、この人は外交的な方だな、あるいは内向的な方だな」とか。
明日はゆっくりされるご予定だと、今回は久しぶりにとれたお休みで来ていらっしゃるとか。スタッフがメモをとりまして、それに合わせて次の夕食の場面で、ではこういう提案ができるのではないか、とパスをつなげてフル演出していく。
――なるほど。
たとえばご夫婦でいらして、「実は18回目の結婚記念日なんだ」「それはおめでとうございます」で、そこで終わるのではなくて。それが夕食の間にお祝いの一品です、というようにつながったり、お部屋に戻るとメッセージカードが入っていたり。
先ほどポロっと拾った言葉がスイッチになりまして、いくつか持っているサービスを仕掛けていく、この1泊の間にできるように実行していく。
――こういう高品質なサービスは採算度外視な部分もあるとは思いますが、どこまでもできるわけではなく、総支配人が上手にバランスを取るのは大変でしょう。
そうですね。基本的にはあまり制限をかけないスタンスが大切だと考えております。
スタッフにとっては楽しいことでもある一方、あきらめるのは簡単なので、「気がついたけどしなくていいや」という気持ちにさせてはいけない。実行できる環境を整えることが、大切だと思っています。
逆に実行するために無駄な労力は使わないように、接客時間以外の時間、非・接客時間の切り詰めは明確に行うようにしております。
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