昔ながらの職人を「金脈」に変えた大胆な発想 技の伝承を標準化、ネットで引退者掘り起こし
職人を定着させるために作業標準ができた
渡邊 佐和子(以下、渡邊):竹延幸雄社長が経営するKMユナイテッドは、ベテランの塗装職人を多数抱えるだけでなく、そのベテラン職人による人材育成事業にも取り組んでおられます。
竹延 幸雄(以下、竹延):この業界には多くの一流職人がいますが、彼らはフリーランスのような働き方のため、働く場所が毎日変わります。それは業界のしきたりのようなものですが、私の義理の父である先代社長は、そうした職人をいかに定着させるかに腐心しました。それをきっかけとして、作業標準ができたのです。
真山 仁(以下、真山):新たな人材に辞めてほしくないから何とかしようというネガティブな理由ではなく、培ってきた技術を利用して、もっといい環境を作ろうというポジティブな発想から始まっているんですね。
竹延:私たちにとっても、毎日違う人に教えるというのは非効率でしたので。
私は広告会社から転職してこの業界に来たのですが、その業界を専門としている人には、認識の偏りや思い込みのようなものがあると気づきました。人材育成では、「背中を見て覚えろ」というようなことが当たり前になっていて、教える人がいない結果、「教え方がわからない」「教える教材がない」ということに戸惑いました。
真山:昔は徒弟制度もありましたが、今は自分の仕事は、教えることではないと考える職人が多いと思います。しかし、それでは業界全体が縮小してしまいます。