昔ながらの職人を「金脈」に変えた大胆な発想 技の伝承を標準化、ネットで引退者掘り起こし

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竹延:リーマンショックで、思考が止まっていました。一流職人は、誰かに技術をつなげたい、伝えたいという思いがありましたが、後継者がいない。そこを解決すれば、スムーズに血が通い始めるのでは、という手応えはありました。

真山:一流職人だという自負があれば、自分が生きた証しを残したいものですが、伝える相手がいない。さらに、年数がかかるという壁もあります。個人で行うには限界がありますから、伝承の機会を第三者が設定できたら突破口となりますね。若い人たちも、本当は大人にいろいろなことを教わりたいと思っています。今は親子関係も希薄になるか友達感覚という状況なので、年の離れた大人から教わる機会が減ってきています。

渡邊:それはいろんな現場で言われていることですよね。

子世代は祖父母世代になら反発しにくい

真山:子世代は親世代には反発しがちですが、祖父母の世代に対してはその感覚が薄れます。逆に、年配者も息子や娘の世代はちょっと抵抗があるけれど、孫の世代であれば手取り足取り伝えたいという。1世代とばすことで、聞きやすく、伝えやすくなります。お互いにとってメリットは多く、昔なら何年もかかった技術の習得が短縮できるようになります。

昔ながらの職人の技術を、現代社会の人間の感覚と上手にマッチさせられれば、新たな用途が見つかり、より有効に使える可能性もあります。KMユナイテッドは人材育成事業に注力されていますが、塗装業をやりたいという若い人はたくさん集まっていますか?

KMユナイテッドの竹延幸雄社長(写真:NHK大阪放送局)

竹延:ありがたいことに、この仕事が“人気がない仕事”ではないことがわかりました。

真山:塗装業で働く女性も増えてきたそうですね。塗料自体が、体に負担ないよう改良されてきたことは大きいのではないでしょうか。使う道具や材料の改良のほかに、若い人や女性の働き手を増やすための取り組みはされていますか?

竹延:サッカー選手が汚れても汚いとは言われないのは、戦っている姿が見えているからというように、ペンキ屋さんも汚れる過程がわかるように、動画で“技ログ”を作りました。世間に見える化したことがよかったと思います。

結局、弊害があったから人材が入ってこなかっただけの話で、ちゃんと是正すれば塗装業も人気のある仕事だったということがわかりました。そこを学んで方法論を横に共有していけば、業界自体は活性化していくと思っています。

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