自転車ロードレースと組織で働く社員の共通点 映画「栄光のマイヨジョーヌ」に学ぶ組織の形

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映画の監督を務めたダン・ジョーンズ氏は、「単なる自転車競技についての映画ではなく、ヒューマン・ストーリーだ。登場人物たちと感情を分かち合い、夢を実現するための決意と犠牲を知ってもらいたい」と述べている。

大ケガを乗り越えて、チームのエースとしての地位を確立していくコロンビア人レーサーのエステバン・チャベス ©2017 Madman Production Company Pty Ltd

プロ入りの道が閉ざされるほどの大ケガをしたが、回復を見込んでグリーンエッジが契約、最終的にはチームのエースとして活躍するまでに至ったコロンビア人レーサー・エステバン・チャベスや、挑戦15回の末に「クラシックレースの女王」と呼ばれる世界最高峰のワンデーレース・パリ~ルーベを制したマシュー・ヘイマンらが結果を出すに至るまでの過程など、まさに人間ドラマにふさわしいストーリーを、チームの目線を交えて散りばめている。

さらにチームのあり方という点では、2013年のツール・ド・フランスのシーンが象徴的だろう。ツール・ド・フランスでは、その時点の首位の選手が着用できる「マイヨジョーヌ」(黄色いジャージ)を1度でも着用することが名誉の1つになっている。そのジャージを着用していたチームのエースであるサイモン・ゲランスが、南アフリカ人レーサーであるダリル・インピーにマイヨジョーヌを譲り渡した「出来事」は、スポーツではロードレースでしか見ることのできないシーンの1つだ。

会社組織にも通じる、「ビジョンの共有」

そしてオーストラリア人ならではのノリもあるが、底抜けに明るいチームの姿を数多く映し出している。この映画の日本での配給を担うピクチャーズデプトの汐巻裕子代表取締役は、「ロードレースのルールはわからなかったが、伸び伸びやっている選手やコーチの映像を見て、こういう雰囲気を日本人にすごく伝えたいと思った」と語る。

アシストがエースを勝たせるためにあらゆるサポートをし、チームを成功に導くというのは、会社組織にも通じる部分がある。もちろんアシストした社員の仕事が、成績を出していなくても評価することが前提になる。

「プロとしてロードレースに携わる人たちは、目指しているものは、残さないといけない成績がどんなもので、それをするために何をしないといけないかを考えている。会社でいってみればビジョンの共有ができている」(別府氏)

まさに、会社組織に通じる部分といえるだろう。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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