前田建設に900億円、TOBめぐる銀行融資に疑問 みずほと三井住友、早くも減損リスクに直面

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さらに、昨今の状況も影響しているという。

「ここ数年、TOBに発展する案件が増えてきたこともあって、以前に比べ世間的な抵抗感が少なくなってきた。もちろん案件ごとに事情が違って一概には言えないが、敵対的買収案件であっても、以前より融資しやすくなっているのは確かだ」

つまり銀行は、敵対的買収案件に対しても「是々非々で臨む姿勢に転じた」(メガバンク幹部)というわけだ。

だとしても、今回の前田道路をめぐる敵対的買収については、少々事情が違う。TOBの過程で、前田道路がある“奇策”に打って出たからだ。

特別配当で浮上した減損リスク

前田道路は2月20日、1株当たり650円、総額約536億円の特別配当を2020年3月期に実施することを臨時株主総会にかけると発表した。これまで計画していた配当を含めると、今期の配当総額は600億円を超える。

前田道路の現金および現金同等物は、2019年末の連結ベースで約722億円。つまり、特別配当によって手元にある資金の8割超を吐き出す計算になる。前田道路の魅力は豊富な現預金だったこともあり、そのほとんどを吐き出して自らの魅力を失わせようという“焦土作戦”だったというわけだ。

だが、この作戦が思わぬ波紋を広げる。焦土作戦によって巨額の減損損失が生じるからだ。以下の表をご覧いただきたい。これは、ある投資銀行が、特別配当額に応じて算出した前田建設の減損額を試算したものだ。

まず、TOBを仕掛けられた時点における前田道路の「1株当たりの連結純資産」は2539円。TOB価格は3950円なので、この時点での1株あたりのプレミアム=「のれん代」は3950円-2539円=1411円となる。

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