前田建設社長が激白「時間的な余裕はない」

前田道路が反対でもTOBへ突き進む危機感

筆頭株主である前田建設のTOBに前田道路が反対する異例の展開となっている(撮影:尾形文繁)
1月20日、準大手ゼネコンの前田建設工業は持分会社の道路舗装大手・前田道路に対して公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。TOB発表前の前田道路の株価は2633円(1月17日終値)だったが、上場来最高値となる1株3950円、2181万株を上限に1月21日から3月4日まで買い付け、出資比率を51%(現状は24%)に引き上げる計画だ。
一方、前田道路側は1月20日のTOB公表の直前、前田建設が保有する前田道路の株式を全株買い取ることと資本提携の解消を申し入れ、1月24日にはTOBへの反対を表明している。
事前調整で事を荒立てないように進めるゼネコン業界で、こうした経営対立が表面化するのは異例だ。前田建設側の狙いは何か。創業家出身の前田操治社長を直撃した。

変化に向き合わないと取り残される

――なぜ、前田道路にTOBを行うのでしょうか。

背景には、劇的な経営環境の変化がある。建設業では人口減少による、担い手の確保や生産性向上が喫緊の経営課題だ。ITやAI(人工知能)といった新しい技術の登場が、仕事のやり方を一気に変える潜在的な力がある。こうした世の中の時流の変化に向き合わないと、取り残されてしまう。

一方、この変化に早く着手してグループの総力を結集して対応すれば危機をチャンスに変えられる可能性がある。当社は今、本業の建築や土木で(建設を請け負う)「請負」一本足から脱却し、PPP(官民連携)やコンセッション(公共施設の所有権を持たず運営管理を受託する民営化スキーム)といった「脱請負」のインフラ運営事業という新しい領域に挑戦している。

「脱請負」を進めていくと、請負事業では得られない知見が得られる。こういったものを既存の請負事業で展開すれば、顧客への提案力が上がって競争優位性が高まる。足し算ではない相乗効果を実感しており、このシナジーを享受しない手はない。

もう1つ、前田道路は(道路舗装工事で使われるアスファルト合材をめぐる価格カルテルで公正取引委員会から課徴金納付を命じられるなど)コンプライアンスの問題を抱えている。昨今はグループガバナンスが求められており、この対応を怠ると成長戦略の取り組みを一気に崩しかねない。

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