前田建設社長が激白「時間的な余裕はない」 前田道路が反対でもTOBへ突き進む危機感

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――これまで前田建設は、映画化された『前田建設 ファンタジー営業部』や研究開発所で外部との提携、インフラ運営事業への取り組みなど、お堅いゼネコン業界の中で、進取の気性に富むと見られてきました。しかし今回、前田道路が反発する中でTOBを強行したのは、従来の取り組みからすると異質に見えます。

前田グループはこれまで緩い関係を維持してきた。しかし、昨今の環境変化にはグループとして対応しなければいけない。TOBは性急と見られがちだが、早くグループとして(企業ごとの)戦略を結びつけて、新しい変化に対応していかなければならない。胸襟を開き、さまざまなところと技術開発や事業を一緒に行い、社会の流れや課題に対応していくことが必要だ。

これまで建設会社は、社会の中で請負事業に徹することが求められてきた。社会もインフラも成熟化し、価値観が変化していく中で、請負事業だけでは生き残れない。事業主の目線で社会課題に向き合い、提案できるだけの力をつけていかないと、目的を達成できない。そうした意味で会社も変わらなければならない時期になった。

強引にやるのはよくない

――ただ、前田道路側の開示を見ていると、そうした前田建設のビジョンに理解を示していません。ビジョンが共有できない会社を資金力で子会社化するのは経営として正しい選択肢なのでしょうか。

私も強引にやるつもりはない。強引はよくない。しっかり説明し、理解してもらったうえで、シナジーを出していきたい。

前田道路は社会資本整備で企業を成長させるという理念を持っている。今後、道路舗装市場で大きな需要が見込めない中、既存事業を強化してシェアをあげていく方針には大賛成だ。そうした長期的な事業の考え方は賛同し、尊重する。

一方で、新しいインフラ運営市場ができる中で、前田グループの優位性を活用して挑戦していかない手はない。それは既存事業の否定ではない。われわれは挑戦することで道路工事とアスファルト合材の製造事業をさらに強化できると感じ始めている。それを前田道路にうまく伝え切れていない。今やっていることを見てもらい理解してもらう。

実際、当社が取り組んでいる脱請負事業についても、社員に浸透させるのに時間がかかっている。会社の方針を発表しているが、現場にいる末端の社員との共有はすぐにはできない。支店長に伝え、所長に伝えれば自動的に従業員が理解するというものでもない。

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