前田建設社長が激白「時間的な余裕はない」 前田道路が反対でもTOBへ突き進む危機感

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――前田社長自身は社員の理解のために何をしていますか?

私も100現場くらい回って、何回も繰り返し言っている。それでも現場に聞くと「会社が何を考えているかわからない」と言われてしまう。実際に脱請負のプロジェクトが動き始め、それを見て、感じて、ようやく変わっていくことが実感できるという状況だ。

だから前田道路との資本提携強化は1つのスタートだ。その後はビジョンと戦略の共有に相当の努力をしていく必要がある。

前田道路が懸念する(今後の)上場については維持をする。独自性、自主性が損なわれるのではという懸念も、「最大限尊重します」と繰り返し伝えている。われわれは数年前に一緒になった会社ではない。(前田建設と業務提携し、会社更正法に基づく更生計画案が認可された)1964年から50年以上のお付き合いがある。その中で厳しいときも一緒になって乗り越えてきた歴史がある。

これまでも最大限、前田道路の経営の独自性・自主性を尊重して一緒にやってきた。今後も前田道路の考えや企業文化、社員の思いを最大限尊重していくことは引き継いでいく。

TOBに失敗するとは考えていない

――前田道路の公表資料によれば、同社の労働組合員の約8割が今回のTOBに反対だとしています。説得は可能でしょうか?

TOBの性格上、事前に説明はできなかった。しっかりとわれわれの考え方を伝える努力をしていかなければいけない。グループとして事業シナジーとガバナンスの確立に取り組むことは、前田道路の企業価値向上に資するし、同社の社員にもプラスになると信じている。それをしっかり丁寧に説明していきたい。

――前田道路は、前田建設が具体的なシナジーを明示していない、あるいは前田道路のほうが時価総額が高く市場価値が高いと主張しています。

インフラ運営市場はまったく新しい事業だ。市場としては15兆円、そのうち、(前田グループの事業として)1.5兆円が見込めると考えているが、なかなか算定は難しい。その数字がないからといって挑戦しない理由にはならない。

「今のやり方を続けていればいいという時代ではない」と強調した前田操治社長(撮影:尾形文繁)

これからの未来は過去の延長線上にはない。今のやり方を続けていればいいという時代ではなくなった。

――前田道路はTOBに反対し、ホワイトナイト(新たな友好的な買収者)を探すと明言しています。追加的な策を打つ可能性はありますか。

われわれとしてはまだまだ(TOBの必要性を)伝えきれていないと思っている。(ホワイトナイトが)出てきてないのでなんとも言えないが、賛同してもらえるように、友好的に進められるように、継続的に話をしていきたい。現時点でTOBに失敗するとは考えていないし、新たな策を打つことも考えていない。

今回は両者の長い関係がある中で、歴史的に大きな決断だった。私は10年後に今の状況を振り返ってみて、「あのときはいろいろあったけど、よかったな」と言えるようにやっていきたい。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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