前田建設社長が激白「時間的な余裕はない」

前田道路が反対でもTOBへ突き進む危機感

前田操治(まえだ そうじ)/1967年生まれ。1997年に前田建設工業入社。2002年に取締役就任。2016年より現職(撮影:尾形文繁)

こうしたさまざまな環境変化に対し、「グループとして一緒にやっていきましょう」と、丁寧に誠意を持って話をしてきたが平行線だった。時間をかければもっとうまくいったかもしれないが、環境の変化は劇的で、時間的な余裕はない。TOBという形を取らざるをえなかった。

――前田道路はアスファルト合材の件を含め、この5年で5回も公正取引委員会から課徴金の納付命令を受けています。今回のTOBでは株式の取得上限を51%としていますが、この比率でコンプライアンスやガバナンスの改善を迫れるのでしょうか。

われわれの現在の出資比率は24%強。前田道路も独立した上場企業だ。ガバナンスやコンプライアンスについて意見交換はしていたものの、お互いの考えを尊重して、踏み込んだ議論ができていなかった。

これまでいい意味で独立・協調で進んできた。しかし、環境が変わってきている。各社のコンプライアンスやガバナンスだけでなく、今はグループとしてガバナンスに対応しなければいけない。

上場廃止はデメリットが大きい

会社だけでなくグループとして、どういう戦略で向かっていくのか。なかなか意見があわないところが出てきてしまうため、資本比率を高める必要がある。

一方、前田道路としても上場しているメリットがある。社員のモチベーションを高めることや取引先の社会的な信用だ。社員の思い、企業文化は財産だ。そういったものを考えると性急に(株式を100%取得して)上場廃止をするとデメリットが大きい。今は上場を維持することが重要だ。

――前田建設はコンセッションや大型工事の立て替え金などもあり、資金需要が大きい状況です。前田建設の時価総額を上回る前田道路を100%子会社にするのは資金的に難しかったというのが実情ではないでしょうか。

今は積極的に投資を行う時期だと考えている。会社の利益をどう配分していくか。成長投資や人材育成などバランスを見ながら、今回の(TOBの)金額を決めている。

――前田道路側の主張によると、「前田建設は(当社の)アクティビストと面談し、前田道路へのTOBの可能性を察知したため、アクティビストのリスクを排除するためにTOBを決めた」と説明を受けたとしています。こうしたことがTOBの背景だったのではないでしょうか?​

当社も前田道路も少数株主とは積極的に対話しているし、(少数株主の)意見は最大限尊重したい。ただ、少数株主のことがあったから、このような大きな決断をしたわけではない。今回は事業シナジーの追求とガバナンスの確立。それがTOBの決断理由だ。

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