前田建設に900億円、TOBめぐる銀行融資に疑問 みずほと三井住友、早くも減損リスクに直面

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ところが、前田道路が650円の特別配当をすれば、1株当たりの連結純資産は1889円に減少、一方でのれん代は3950円-1889円=2061円に増加する。今回の買い付け予定株数は約2181万株なので、前田建設が抱えるのれん代は、総額で2061円×2181万=約450億円となる。

TOB成立後の株価動向にもよるが、株価が一定水準を下回ると、こののれん代を取り崩して損失計上しなければならない。いわゆる減損だ。特別配当を実施した後に、プレミアムを乗せている株価が下がるのは明らか。したがって、前田建設は450億円もの減損リスクを背負うことになるのだ。

形を変えた「損失」もある

そしてもう一つ。特別配当を受けることができるのは、基準日である3月6日時点での株主。しかし、前田建設がTOBの期限を3月12日まで延長したことで、TOBで取得した分はこの対象から外れてしまう。その金額は、前述の試算で約133億円に上ると見られており、これも大きな機会ロス、形を変えた「損失」といえるのだ。

巨額の減損リスクを抱えていることに加え、手に入れることができるはずだった特別配当まで失うとなれば、「900億円もの融資をする経済合理性があるのか」(金融関係者)との声が上がっても無理はない。

ここ数年、TOB案件が急増していることを考えれば、敵対的買収案件も増えていくのは確実。今後TOB案件にどう対処するのか。銀行には明確な説明責任が求められることになりそうだ。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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