臨時休校「一生の思い出」奪われた子たちの本音 卒業は人生の節目、なおざりにしてはいけない

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「心の準備が欲しかったです。卒業前の最後の1カ月は、子どもにとって思い出作りにとても大事な時期なのに、その大切な時間を奪われてしまったような気持ちです。もちろんどうしようもないことなのは分かっていますが…」。そう語るのは、冒頭の美海さんの母である、母親の佐和田真知子さん(38歳)。

命を守るため感染拡大を阻止することが最優先であるから、致し方ないことは重々承知しているものの、卒業に向かってカウントダウンもなく、突然「今日で終わり」と突き付けられ、この虚しさと憤りをどこにぶつけたらいいのか分からないと佐和田さんは語った。

「卒業式の掛け合いの言葉や、卒業の歌で在校生に見送られながら卒業する、日本人の誰もが経験する感極まる初めての体験をさせてあげられないのは悲しい」と、筆者に話してくれた親もいた。

3.11で卒業式を経験できなかった人たちの本音

式典やイベントの自粛といえば、3.11が思い起こされる。2011年3月11日の東日本震災発生直後は、教育機関における卒業式や祝賀ムードのイベントの中止が相次いだ。当時、卒業式を経験できなかった多くの人が、誰のせいでもない、ぶつけようのない悔やまれる思いを未だに抱えているという話も聞く。

感情的な部分を論じている面もあるが、そうはいっても人間は感情の生き物だ。そして何事も物事の「区切り」や「終わり」には、そのための段階的な心の準備を経て、けじめをつけるための「儀式」が必要となる。子どもたちにとっての卒業式がまさにそれだ。

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お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんは2月29日、自身のツイッターを更新し、卒業式が中止となった学生たちへ「YouTubeのロンブーチャンネルで、3月15日にリモート卒業式をやろうと思うのですが…家から出ずともネットで繋がって卒業式をやりませんか?」と呼びかけた。こうしたケアは親たちにとってもありがたいものだろう。

このようなどうしようもない事態に陥ってしまったのであれば、この与えられた時間をいかに有効活用して次のステップに進めるように考えることが、大切なのではないだろうか。限られた条件の中であっても、子どもたちの心に一生残る「卒業式」あるいは「卒業の儀式」をなおざりにしてはいけない。学校関係者に限らず、私たち大人にもできることはあるはずだ。

二宮 未央 ライター、コラムニスト

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にのみや みお / Mio Ninomiya

東京都出身。幼稚園教諭を経て結婚。出産・育児に入る。主婦として家事全般や子育てにいそしみつつ、保育士としても活動。保育園新規開園の立ち上げも経験する。2016年から、(株)エアー・シンフォニーに所属。2017年、宣伝会議の編集・ライターコースの卒業制作で最優秀作品賞を受賞。著書に『小学校受験バイブル 賢い子育てをするために』(あさ出版)。

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