「外国人最年少」でミシュランを取った男の素顔

料理人・松嶋啓介とはいったいどんな人物か

「現代は、社会全体が忙しくなりすぎていますよね。何でもかんでも時短で手軽に済ませようという流れの中でどんどん料理の味は濃くなり、『味付け』という言葉のとおり、おいしさを塩、砂糖、油に頼るようになります。すると、次第に脳が強い刺激に慣れてしまい、結果としてそれが高血圧症や糖尿病などの生活習慣病につながっていきます。

それだけでなく、日本で何か事件が起きればすぐにSNSでバッシングが起きますよね。ネットで人を叩く人たちは、どうしてあそこまで心ない発言を平気でできるのでしょうか。

この要因も、ぼくは食事にあると思っています。普段から味の濃い料理で食欲を満たしているように思える。でも、実際それは脳の満腹中枢が刺激されただけで、腸からの吸収によって自律神経を抑制し、気持ちをリラックスさせるような食事ができていないんです。満たされない思いが、人に冷たく、殺伐とした世の中の空気をつくってしまっているように思うのです」

こうした現代人の心と体をケアし、社会問題を解決するべく、松嶋さんは「うま味(UMAMI)」の普及に心血を注ぐ。

「塩、砂糖、油や、化学調味料に依存しなくても、天然のうま味を生かせば、心がホッとして体にやさしい料理をつくることができます。僕は『UMAMI』を使った問題解決を『UMAMINOVATIOIN』と呼んでいますが、うま味豊かな食に親しんでいれば、心身ともに豊かな人生を送ることができるようになると思っています」

「食」という漢字は、「人を良くする」と書く。日本へ帰国時、松嶋さんは「原宿 食サミット」を筆頭に、「パパだけの料理教室」「美食の寺子屋」「食から学ぶ経営術の料理教室」など、日仏の食文化を守り、本当の豊かさを学ぶ料理教室を行うほか、団体・企業での講演会も行っている。

成長のために環境を変える

最後に、これまで「人と競争しない」「人と同じことをしない」という考えで、一石ならず、何石もの石を投じてきた松嶋さんに、これから取り組んでいきたいことを聞いた。

松嶋 啓介(まつしま けいすけ)/料理人。1977年福岡県生まれ。エコール辻東京を卒業。20歳で渡仏し各地で修業。2002年(25歳)にニースにレストラン「Kei’s passion」をオープン。2006年(28歳)のときに本場フランスのミシュラン1つ星を外国人最年少で獲得。名称を「KEISUKE MATSUSHIMA」に改めて拡大オープンし、現在に至る。010年仏政府よりシェフとしては初の最年少で「芸術文化勲章」を授与。2016年仏政府より「農事功労章」を受勲。2018年に世界を変え「新たな未来」をもたらす20の革新の1人としてWIRED Audi Innovation Award 2018を受賞(撮影:梅谷秀司)

「『want(欲求)』ではなく『care(配慮、心遣い)』、言い換えれば、人の役に立つという目線で、新しいことをやっていきたいと思っています。

それと、アメリカなのか中国なのか、違う国に行ってみたいですね。成長するためには環境を変えて、自分が経験したことがない世界に飛び込むのがいちばんです。そろそろ今の自分に飽きてきましたし、世界にはまだまだたくさん問題がありますからね」

世界を変えたappleは、かつて“Think Different”というキャンペーンを展開し、世界中の注目を集めた。そのメッセージが、松嶋さんの姿に重なって見える。

「クレージーな人たちがいる。反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。四角い穴に丸い杭を打ち込むように、物事をまるで違う目で見る人たち。彼らは規則を嫌う。彼らは現状を肯定しない。彼らの言葉に心を打たれる人がいる。反対する人も、称賛する人もけなす人もいる。

しかし、彼らを無視することは誰にもできない。なぜなら、彼らは物事を変えたからだ。彼らは人間を前進させた。彼らはクレージーと言われるが、私たちは天才だと思う。自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから」(1997年、apple“Think Different”キャンペーンより)

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