47歳「斬新な日本酒」を造り込む男の痛快な仕事

岩手の老舗酒造5代目はここまで徹底する

喜久盛酒造の社長・藤村卓也さん。5代目として日本酒造りの伝統を守りつつ斬新な商品も手がけている原動力とは?(筆者撮影)
これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむが神髄を紡ぐ連載の第65回。

藤村卓也さん(47歳)は岩手県にある清酒製造業、喜久盛酒造の社長だ。

喜久盛酒造は1894年から酒蔵を続ける歴史のある酒造店であり「喜久盛」「鬼剣舞」といったこだわりの日本酒が売りだったが、現在1番の売れ線は「タクシードライバー」という銘柄だ。

「え? 本当に日本酒の名前なの?」

と思った人も多いだろう。名前だけではなく、赤い文字で描かれたパッケージデザインも強烈だ。

その過激な見た目とは裏腹に、「タクシードライバー」は岩手の米だけを使ったまじめな純米酒だ。伝統の製造方法を保ちつつ、斬新な商品を造る藤村さんだが、これまでどのような道のりを歩んで来たのだろうか?

造り酒屋の5代目として生まれる

藤村さんは母親の実家である東京の病院で産まれ、その後は岩手で育った。

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「造り酒屋の子どもとして生まれました。創業は1894年で、僕は5代目になります。小さい頃は景気がよかったですね。人もたくさん雇っていました。欲しいと思った物はなんでも買ってもらえました」

日本酒の需要は1973(昭和48)年をピークに落ち込んでいくが、その頃はまだ余力が残っていた。

「1977(昭和52)年には、岩手の放送局でローカルテレビコマーシャルを流していました。オリジナルソングを歌っていたのがテレサ・テンです。CMには、こみこみで200万円くらいかかったそうです。本当に余裕があったんですね」

小学校は1学年1クラス20人と、第2次ベビーブーム世代としては少なかった。

「小学校3年生のときにはすでに、家業を継ぐという意識が芽生えていました。ただ、いずれ家業は継ぐけど、それまでにいったん親のコネが通じないところで就職して、30歳くらいまでは好きなことをやろうと思っていました。

その頃は実は運動嫌いな肥満児でしたね。運動をしたくないという理由でブラスバンド部に入っていました」

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