47歳「斬新な日本酒」を造り込む男の痛快な仕事 岩手の老舗酒造5代目はここまで徹底する

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「嫉み(そねみ)」は、徳島県にある酒蔵三芳菊とのコラボレーション企画になった。

「もともと仲のいい酒蔵でした。

『徳島県と岩手県の酵母を交換して酒を造ったら面白いのでは?』

という話になりました」

酒蔵同士、酵母を交換して日本酒を造るというのは業界初の試みだった。パッケージデザインはフェイスブックで、

「日本酒のデザインをやってみたい」

とつぶやいていた、知り合いのデザイナー、江戸川ずるこさんにお願いすることになった。

「喜久盛酒造の酒が『嫉み(そねみ)』三芳菊の酒が『妬み(ねたみ)』で合わせて『嫉妬(しっと)』になります。発売してから今年で3年目になりますが、好調ですね」

毎年生産量が増えているのが、にごり酒の「ビクトル投げからの膝十字固め」だ。格闘技の名前から来ているインパクトのあるタイトルと、男性の顔のアップという独特のデザインが受けている。

「日本酒っぽくないデザインは酒屋では目立ちます。一度は飲んでみようと思ってもらえるんじゃないでしょうか? それでおいしかったらリピーターになってくれるんじゃないかと期待しています」

喜久盛酒造は酒造りにもこだわりがある

一からお酒をつくるわけではなく、既存のお酒にパッケージをして販売することもある。

映画『カメラを止めるな』のオフィシャル企画でカップ酒の製造(写真:藤村卓也さん提供)

「映画『カメラを止めるな』のオフィシャル企画で、カップ酒の製造をしました。普通のカップ酒は200円くらいですが、うちのは純米酒ですので500円くらいになってしまいます。それを会場では800円くらいで販売していたので、さすがにちょっと高すぎるかな?と思いました(笑)」

喜久盛酒造では、お酒以外にも、Tシャツやグッズなどを製作して販売している。

社長自らが足を運ぶ試飲イベントで販売している。もちろん未成年やお酒を飲めない人でも買える。喜久盛酒造の知名度を上げる起爆剤になればいいと、期待している。

「いろいろな企画を考えるのは好きですね。誰々と組んでああいう商品はつくれないか?とかいつも考えています。プライベートの活動の中で、仲良くなった人にお願いするケースが多いですね」

喜久盛酒造の酒は、どうしても奇抜なパッケージデザインに目が行きがちだが、お酒自体ももちろんこだわって造っている。

「岩手の米しか使わないと決めています。醸造アルコールの添加もしません。『タクシードライバー』の米は『かけはし』を使っています」

「かけはし」は食用米であり、岩手でもかなり小さい規模でしか流通していない米だ。

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