47歳「斬新な日本酒」を造り込む男の痛快な仕事 岩手の老舗酒造5代目はここまで徹底する

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「そして続いては自分で考えた銘柄を造ろうと思いました。そこで、もともと大ファンだった漫画家の根本敬さんに命名してもらいたいと思いました」

藤村さんは東京に住んでいるときに、根本さんの展覧会に足を運んでおり、面識があった。

「久しぶりにお会いしたら、僕のことを覚えていてくれました。日本酒の件をお願いしたら、快く了承していただきました」

当時、根本さんは『電氣菩薩 豚小屋発犬小屋行きの因果宇宙オデッセイ』というタイトルの本を上梓したところだった。

最初に手がけた日本酒『電氣菩薩』のラベル(写真:藤村卓也さん提供)

そこで「電氣菩薩」という名前のお酒はどうか?と提案された。デザインはデスマッチ系のプロレスラーのTシャツのデザインで知られる植地毅さんにお願いすることになった。

そして藤村さんが手がける最初の日本酒が販売された。

「その後、映画ライター、アートディレクターの高橋ヨシキさんと知り合いました。僕は氏がパッケージデザインをしたグァルティエロ・ヤコペッティ監督の作品のファンでしたから嬉しかったです」

マニアックな映画について話をしながら、新宿を飲み歩いた。そのうちに

「新しい日本酒の銘柄を考えよう!!」

という話になった。話しているうちに、

「『タクシードライバー』ってどう?」

と提案された。

既存の熱燗に合う日本酒で新たなラベルを開発

「ラベルをデザインしてくれるなら、酒造りますよって言ったら、後日メールでパッケージデザインが届きました。それがかっこよかったので商品化することにしました」

熱燗に合う「タクシードライバー」のラベル(写真:藤村卓也さん提供)

高橋さんの日本酒に対する注文は、

「熱燗で飲んでおいしい酒にしてくれ」

というものだけだった。

「熱燗に合う日本酒は、香りがフルーティーなものより、香りは控えめでしっかりした味があるものがいいですね。

喜久盛酒造の酒はそもそも、酸度が高めの食中酒が中心です。脂っこいものを食べたときに飲むと、キレのよさで脂っこさを流してくれる日本酒です。だから、自然に造れば、高橋さんのご期待に添えるお酒になると思いました」

「アメリカン・ニューシネマの名作にインスパイアされて作りました。『タクシードライバー』は弊社で商標登録しています。ラベルのデザインは高橋ヨシキさんに水彩画で描き下ろしていただきました」

そうして「電氣菩薩」に続き「タクシードライバー」が新たなラインナップに入った。

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