北朝鮮への経済制裁、その効果やいかに? 政府は弱腰との批判があるが・・・
北朝鮮のミサイル発射に対して、わが国と米国は、安保理決議における「国連憲章7条に基づく制裁」を提案しました。そして最後に、中国とロシアの拒否や棄権に配慮し「制裁」という国連憲章7章を削除することになりました。
一部には「制裁」が削除されたことに対して「政府は弱腰だ」との批判がありますが、はたして本当にそうでしょうか?
私は、安保理決議で北朝鮮を非難することができただけでも大きな効果があると考えています。少なくとも国際世論の関心を北朝鮮の挑発的な行動に向けることはできましたし、中国との新たな対立課題を作らなかったことはよかったのではないでしょうか。
私は、正直なところ、わが国の外務省が中国とロシアとの調整をやったとは見ていません(米国政府がやったと思っています。ちなみに決議案の交渉中に米系新聞に出ている決議案の英文を欲しいと外務省に依頼したところ「ない」との回答を頂きました。外交機密だからそう応えたのか、それとも本当になかったのかは分かりません)。ただ、制裁を持ち出し、それから中国やロシアと調整するという外務省の交渉手段を私は評価しています。
経済制裁には、中国との連携が不可欠
下の表は、北朝鮮の貿易額の推移です。わが国の北朝鮮との貿易額は、減少を続けており、現在、北朝鮮にとって最大の貿易相手は、中国となっています。つまり、中国との連携がなければ経済制裁(貿易禁止)はできないわけです。その観点からも中国と調整し、まずは非難決議が出来たことは大きなステップだと言えます。
ただ残念なのは、この非難決議は、北朝鮮の国民には届かないということです。様々なメディアが検閲されており、北朝鮮の人々は、今世界から自国がどのように見られているかを知らないようです。このような状況で、わが国のイニシアティブで経済制裁を行った場合、逆に北朝鮮の国民には、「日本のせいで食糧や燃料がなくなった」と宣伝され、日本への反感だけが残るのではないかと心配です。
わが国の憲法の前文に「諸国民の公正と信義を信頼して」とあります。北朝鮮の国民に対してなんらかの情報の伝達がなされれば、状況が急激に変わることもあると思っています。ベルリンの壁もグラスノスチ(情報公開)により西側の情報が東側に入ったことから崩れました。