2017年のフィンランドラリー取材の際に、GRカンパニーエグゼクティブ・アドバイザー(当時)の嵯峨宏英氏は、次のように語っている。
「ベース車の課題の1つは『重いこと』。チーム代表のトミ・マキネンに言われたのは『頑丈すぎるよね』でした。軽ければ戦闘力は上がるので、次期モデルは軽くて頑丈なクルマにする必要があるでしょう。かんざしを付けていいクルマにするのではなく、“素”のスペックをよくしていきたい。現時点でそれができていないのは認識しており、次のモデルにつなげていきたい」
さらにTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team唯一の日本人エンジニアである川村倫隆氏は「ラリーカーと市販車の共通性は38%(その中の8%が改修を実施)です。当然、ベース車の素性が上がれば、そのパーセンテージは上がります。そのために、すべての情報はトヨタにフィードバックしています。それをやらなければこのプロジェクトの意味がありません」と言う。
今回、東京オートサロン2020で世界初公開された「GRヤリス(別名:ヤリスGR-FOUR)」は、ズバリWRCの知見/ノウハウを盛り込んで開発されたロードカーだ。
「失われた20年」を取り戻すために
開発コンセプトは「Strong Sport Car」で、具体的には「次期WRCホモロゲモデル」「素のままでローカルラリーを勝てる実力を備える」「誰でも買えるスポーツモデル」という3つのキーワードが掲げられた。開発の陣頭指揮を執る齋藤尚彦氏はこのように語る。
「まず、トヨタはスポーツ4WDの『技術』も『技能』も失っていたため、ゼロから学ぶ必要がありました。われわれは失われた20年を最短で取り戻すために、モータースポーツから学ぶ開発を選択しています。強いクルマ作りはWRカーの開発を行うTMR(トミ・マキネン・レーシング)から、市販車では考えられない評価はレーシングドライバー/ラリードライバーから学びました」「GRヤリスは、1999年に生産終了した『セリカGT-FOUR』以来20年ぶりの復活となる『スポーツ4WD』です。トヨタにとって非常に重要なミッションを任されたものの、開発時は生みの苦しみを嫌というほど味わいました」
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