「GRヤリス」乗ってわかったトヨタの本気度 20年ぶりに復活した「スポーツ4WD」の実力

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ターマック/グラベル共に短い時間の試乗だったので、今回はその性能の一部を味見した程度にすぎないが、総じて言うとレベルは非常に高い。

基本は安定志向だが、ドライバーの操作でさまざまな顔を見せてくれるうえ、ドライバーが失敗したらその失敗をシッカリ教えてくれる……つまり、「クルマとの対話」がしやすいのだ。

このあたりは「86」や「スープラ」にも通じる、トヨタの“味”だと思う。ちなみにまだ章男社長の「合格」をもらっていないそうなので、市販直前まで開発は続くだろう。

価格は396万円~456万円

GRヤリスは、トヨタが最も苦手とする「少量生産」にチャレンジしたモデルでもある。

スポーツカー継続のために86はスバル、スープラはBMWとタッグを組んだが、GRヤリスはトヨタで自社生産される。

齋藤氏は「スポーツカーの開発/生産は特別なことではなく、現地現物を基本とし、ムリ/ムダ/ムラをなくす『TPS(トヨタ生産方式)』を愚直にやることがいちばん大事でした」と語っている。

生産は元町工場のスポーツカー専用ライン「GRファクトリー」を新設。タクトタイム600秒、ベルトコンベアのない特別なラインで1台ずつ丁寧に生産される。

東京オートサロン2020では「GRヤリス」の公開とともに2020年のWRC参戦体制が発表された(写真:トヨタ自動車)

WRカーのホモロゲーションを取得するには、ベースとなるモデルが「連続した12カ月間に2万5000台を生産すること」が必要となる。トヨタ関係者の中には「特殊なモデルだから」と心配する人もいるようだが、世界でも数少ないモータースポーツ直系のスポーツ4WDへの期待は高い。2万5000台は、あっという間に売り切ってしまうだろう。

価格は、RZ“High-performance・First Edition”が456万円、RZ“First Edition”が396万円と発表されたが、性能とこだわりを知ると決して高くはない。まさに「令和の4WDスポーツ」の誕生だ。

GRヤリスを購入することは、トヨタのWRC活動に間接的に協力することになる。筆者もその1人になりたいと思っている。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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