世の中にはさまざまな移動手段があるが、その中でも自動車のメリットといえば「移動の自由」があることではないだろうか。自動車の進化により人々の暮らしは大きく変わったが、その一方で避けて通ることができないのが「交通事故」だ。
自動車メーカーは交通事故による死亡者や重傷者をなくすために、さまざまな安全技術の開発を行ってきた。衝突吸収構造ボディ、シートベルト、SRSエアバックシステム、アンチロックブレーキシステム、車両挙動制御システムなどが普及してきたが、昨今注目を集めているのが「衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)」だ。
簡単に説明すると、車両前方に設置されたセンサーにより前方の車両の接近や障害物を検知すると警告もしくは自動的にブレーキを作動させ、衝突を回避あるいは被害の軽減を図る機能である。
AEBSといっても“性能差”は存在
世界初採用はトヨタ・ハリアー(2代目:2003年)だが、「自動でブレーキをかける」といった機能を備えたのはホンダ・インスパイア(4代目:2003年)である。
さらに“完全停止機能”を備えたのはボルボXC60(2008年)だが、その認知度を大きく高めたのはスバル・レガシィ(2010年)に採用された「アイサイト(バージョン2)」だろう。「ぶつからないクルマ?」というキャッチコピーはもちろん、それまで高価だったシステムを約10万円という戦略的な価格設定にしたのが功を奏し、「ユーザーは安全にお金を払わない」という定説を覆した。
その後、ほかのメーカーも積極的にAEBSの展開を行っているのはいうまでもなく、日本や欧州を含む40カ国・地域が新車搭載の義務化に合意している。
ただし、一口にAEBSと言ってもどれもが同じ性能かというとそうではなく、確実に“性能差”は存在する。AEBSの機能を大きく分けると、障害物や人を認識する「センサー」、センサーで認識した情報から衝突の可能性を判断し指示を行う「コントローラー」、そしてブレーキや警報表示などの「ハードウェア」の3つで構成される。
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