1997年に世界初の量産ハイブリッドカーとして登場したプリウス。「21世紀に間に合いました」のキャッチコピーが記憶に残っている人も多いと思う。トヨタ自動車がバブル崩壊以降「このままのクルマ造りでいいのか?」と模索していた答えの1つである。
エンジンとモーターの綿密な制御により、当時の1.5L級のセダンの10.15モード燃費が14~15km/Lだった時代に28km/Lという燃費を実現。更にCO/HC/NOxの排出量は当時の規制値の約10分の1と全てが群を抜いていた。乗り味は決して洗練されてはいなかったものの、これまでのクルマの提供価値とは異なる「プラスα」が備わっていた。
価格は215万円と当時のカローラの約50万円高だったが、ハイブリッドシステムのコストから逆算すると原価を大きく割り込んでいたという話も聞く。原価に厳しいトヨタながらも発売を決心したのは、「21世紀に向けた環境に優しいクルマづくり」の挑戦のためだったという。初代は大ヒットとならなかったが、2代目以降はヒット作となった。
あれから25年、当時プリウスしかなかったハイブリッドカーはコンパクトカー、セダン、SUV、ミニバン、そして商用車までトヨタのほぼ全ての車系にラインアップされ累計販売は2000万台(2022年末)を超える。電気自動車(BEV)を推進する人たちは「ハイブリッドは繋ぎの技術」と揶揄するが、この20年で日本の自動車CO2排出量23%削減は世界的に見ても極めて高いレベル。これに大きく貢献しているのがハイブリッドなのは言うまでもない。
「タクシー専用車」か「愛車」か、のケンカ
歴代プリウスはそんなハイブリッド車の普及を牽引する存在だったが、幅広い車種でハイブリッドが普及してきた現在、その役割は1つの節目を迎えることになった。実は上記のような理由で「プリウス廃止」という案もあったというが、「エコカーは普及してこそ環境に貢献するため、手が届くクルマは絶対に残さなければならない」と継続は決定。しかし、どのようなクルマにするのかで意見が大きく分かれた。
豊田章男社長は「真のコモディティとなるタクシー専用車」であるべき、開発陣は「愛車として合理性だけでなくエモーショナルな体験を提供できるクルマ」であるべきだと。この状況に豊田社長は開発陣を否定せず、「このケンカ、面白いね」と語った。
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