日本高校野球連盟の「投手の障害予防に関する有識者会議」は、2019年11月20日に日本高野連に答申を提出した。11月29日に開かれた日本高野連の理事会では、この答申を全会一致で承認した。
筆者は昨年1年間、この問題について取材を続けた。答申後も関係者の話を聞いた。これらを基に今回の答申内容を評価したい。
「1週間500球以内」は実質的な投げ放題?
焦点だった「球数制限」は
となった。
昨年夏の甲子園で最も多くの球数を投げたのは、優勝した履正社の清水大成が594球、これに次ぎ準優勝した星稜の奥川恭伸が512球を投げたが、最後の1週間に限定すれば履正社清水は327球(2回戦~準々決勝は350球)、星稜奥川は379球だ。両投手ともに1週間で3回戦、準決勝、決勝に先発したが、準々決勝は他の投手に任せている。
過去5年間の夏の甲子園で「1週間で500球」を超えたのは、2018年夏の金足農、吉田輝星が2回戦154球、3回戦164球、準々決勝140球、準決勝134球の592球を投げた例があるだけだ(決勝戦から逆算すれば580球)。
これだけを見れば、この「1週間500球以内」という目安は「現状追認」にほかならない。「実質的な投げ放題だ」という声も聞こえてくる。
ちなみにNPB(日本プロ野球)で昨年最も多くの球数を投げたのはソフトバンクの千賀滉大の3007球だが、1週間に限定すれば5月18~24日の243球が最多。体が出来上がったプロ選手でも1週間で500球の半分の250球さえ投げる投手はいないのだ。
この数字は2003年に日本臨床スポーツ医学会学術委員会、整形外科専門部会が発表した「青少年の野球障害に対する提言」が目安となっている。
この提言には
という内容があった。ただしここでいう「週 500 球」は試合に限定せず練習も含めた「全力投球」だ。「1週間500球以内」がブルペンでの投球練習も含めたものであれば、試合での球数はさらに制限される。これなら「500球」でも実効性があると思われた。
この数字が出てきたのは9月20日の有識者会議第3回の会合の後だが、筆者はそのあとに何人かの有識者メンバーや当日出席していた関係者に「500球には練習投球も含まれるのか?」と聞いたが「含まれるんじゃないか」「いや、試合だけだろう」とあいまいな答えだった。
最終的には「大会期間中の試合で投げる球数」ということに落ち着いた。この数字が発表されると前述のように「野球の改革」を求める関係者や有識者からは、異論が相次いだ。桑田真澄氏は「小手先の改革」と厳しくこれを批判した。
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