筆者は何人かの有識者会議のメンバーに今回の答申について聞いた。その多くが「一定の成果があった」という認識だった。「球数制限」導入に積極的だった人でも「1年でよくここまでまとめたものだ」と言った。有識者会議を統率した日本高野連の竹中雅彦事務局長が10月16日に急逝するという悲劇に見舞われた中で、ここまでの内容にまとめたのは確かに成果だったといえよう。
事実、昨年4月の段階では「球数制限」は、「甲子園のベスト16以降だけで適用する」という方向でまとまりそうな様相だった。そこから多くの議論を経て、地方大会を含めたすべての試合で「球数制限」が適用されることとなったのだ。
メディアの調査によれば、高校野球の指導者の2割程度は「自分の投手が投げている球数を管理していない」と答えている。球数制限の導入で、こうした指導者たちも投手の球数を意識するようになるだろう。
やっとスタートラインに立ったといえる
実は、今回の「答申」は、「球数制限」だけでなく盛りだくさんの内容になっている。
〇週1日以上の完全休養日の導入、複数投手の育成への留意など「加盟校が主体的に行うべきこと」
〇指導者へのライセンス制導入、学童野球や中学野球大会の適切な試合数など「野球界全体で取り組むべき課題の検討」
いわば、高校野球だけではなく、日本の青少年野球の未来を見据えた内容だ。これは初めてのことだ。さらに「飛びすぎる金属バット」の見直しが盛り込まれたことも、関係者に驚きをもって受け止められた。
これらを勘案して、今回の「有識者会議」の答申について、筆者は一定の評価をすべきだと思っている。現状を根本的に変えるには程遠い内容だが、これを否定してしまっては、またスタートラインにさえ立てない状況に後戻りしてしまう。
「球数制限」は2020年春の選抜から適応される。3年間の試行期間はペナルティーなしである。この間にさらに議論が深まり、世界の水準に少しでも近いルールに改定されることに期待したい。
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