ナンバー2暗殺されたイランの「報復」とは何か アメリカとの全面戦争はありえる?

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だとすれば、ソレイマニ司令官を殺害されたイランには、どのような選択肢があるのだろうか。

イランはかねて、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖を警告しており、アメリカのシンクタンクも、イランが海峡を短期間にわたって封鎖するのは可能だとする報告をまとめている。

昨年相次いだ石油タンカーに対する攻撃を行う能力も、イランの革命防衛隊は保持しており、小型高速艇を使った同様の攻撃は可能だ。だが、今回は、ソレイマニ司令官の殺害に対する報復であることを考えれば、タンカーを狙って原油相場を高騰させるという手法ではなく、アメリカやその権益を狙った攻撃の方に合理性がある。

中東各地で米兵が狙われる可能性

イラクでは、ソレイマニ司令官の暗殺作戦で、カタイブ・ヒズボラの指導者アブ・マフディ・アルムハンディス容疑者も死亡しており、シーア派組織の間では反米感情が高揚している。イランは、影響下のシーア派組織を使って、イラクに駐留するアメリカ軍に危害を加えたり、アメリカ大使館周辺での反米デモを強化したりする可能性がある。

イランは、非対称戦争の枠組みで犯行主体の不明な攻撃を行うことを得意とする。このため、一定の時間を置いて、報復にある程度の匿名性を持たせるため、アメリカ兵を殺害したり、アメリカ人を誘拐したりするシナリオも想定される。

また、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派、パレスチナのイスラム原理主義組織イスラム聖戦などの組織がイスラエルやサウジを狙った攻撃を激化させるおそれもある。イスラエルのネタニヤフ首相はギリシャ訪問を切り上げ、帰国している。

アメリカを狙ったサイバー攻撃を仕掛けるだろう、と予想する専門家もいる。ただいずれにしても、強大な軍事力を持つアメリカに対するイランの報復は、全面的な戦争を回避するものになるのではないだろうか。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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