ナンバー2暗殺されたイランの「報復」とは何か アメリカとの全面戦争はありえる?

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イランは、イラク戦争を機に、中東の4つの国(イラク、レバノン、シリア、イエメン)の首都を支配する勢力に影響力を及ぼすようになったと言われる。その立役者がコッズ部隊であり、ソレイマニ司令官だった。

例えば、イラクではフセイン政権崩壊後にシーア派が主導する政権が誕生し、イランが影響力を強めた。イラクには、親イランの民兵組織が多数存在し、こうした組織が今回の危機の直接的な引き金となった。

昨年12月27日、イラク北部キルクークの基地へのロケット弾攻撃で、アメリカ人1人が死亡した。アメリカ軍は12月29日、この攻撃を行ったとみられるシーア派組織「カタイブ・ヒズボラ」の拠点5カ所を報復として空爆し、20人以上を殺害した。これに対し、バグダッドのアメリカ大使館前で31日、数千人が参加する抗議デモが行われ、背後にイランがいるとしてアメリカ側が非難して緊張が高まっていた。

戦場に足を運び、戦果を築き上げた

ソレイマニ司令官は、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラも強力に支援。2006年にイスラエルとヒズボラが交戦したレバノン紛争では、現地入りしてヒズボラを援護し、イスラエル軍に甚大な被害を与えて実質的な勝利に導いた。

このほか、2011年に始まったシリア内戦にもロシア軍に先駆けて軍事介入し、アサド政権の存続で重要な役目を果たした。イエメンでは、対立するサウジアラビアを苦しめているシーア派系フーシ派を支援。前述の4カ国に対してソレイマニ司令官は、絶大な影響力を持ってきた。

アメリカと対立しながらも軍事力で劣るイランは、中東に散らばるシーア系の武装組織との強固な関係を外交的、軍事的なカードとした。正規軍に対してゲリラ的な手法を多用する「非対称戦争」に持ち込み、アメリカ軍のほか、サウジ、イスラエルなどの同盟国を脅かす存在となってきた。その立役者がソレイマニ司令官であり、戦場に積極的に足を運んで戦果を築き続け、英雄的な存在となっていた。

目立つ存在だったソレイマニ司令官は、イスラエルなどによる暗殺作戦の標的に。暗殺未遂事件もたびたび起き、戦闘を指揮して死亡したとの情報も流れていた。

ソレイマニ司令官の存在感が高まる中、2018年に公表された世論調査では、ロウハニ大統領やザリフ外相を上回る83%の支持率を誇った。暗殺するにはあまりにも大物になりすぎた、との見方も出ていたほどだ。

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