とろける!食感大流行のナゾにせまる?!《それゆけ!カナモリさん》

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 日経MJが2009年10月14日の誌面で同社の産業地域研究所の調査データを掲載した。(概要はネットでも見られる)

 景気低迷や雇用環境の悪化に加え、職場や家庭の人間関係など、現代社会ではストレスを避けて生きることはできない。実際、今回の調査でも、若者・女性を中心とした半数以上が「強いストレスを感じている」と答えている、ということだ。そして、ストレスの高い人のストレス解消法を探っていくと、「睡眠」「飲食」「たわいないおしゃべり」など、比較的単純でストレートな方法で憂さ晴らしをしていることがわかったという。

 ストレスを感じている人は半数を超え、時々感じる人まで含めれば、100%近くに上るというこのストレス社会。調査結果は、「ストレス解消に新たな商機」と報告しているが、まさに、誰もがストレスを感じて癒しを求めている時に、「飲食によるストレス解消」を狙って「とろける」「とろとろ」な飲料や食品が展開されているのだろう。

 10月19日付日経MJのコラム「ブランド深化論」で、花王の食器用洗剤「キュキュット」のことが載っていた。

 P&Gとのシェア争いの中、機能性競争をやめ、「皿洗いの仕上げ段階で、食器を指でこすり“キュキュッ”という音を確認する」という体感を武器にしたとのこと。つまり、機能的価値よりも情緒的価値、工業品質よりも知覚品質で戦ってシェアトップを奪取したという。

 モノを食べたり飲んだりする行為では、栄養の摂取が中核価値で、それが美味しいとかが実体価値となる。「とろとろ」は付随機能としての情緒的価値であり、ストレス社会において、消費者はそこに知覚品質を見いだしている。

 「心を柔らかくする」のは食品だけに求められているわけではなく、他の商品・サービスでも同様だと考えられる。マーケティングの頭の体操として、自分たちが提供している財、サービスの擬音語にしてみたらどうか。そして、その擬音語が一体どんな情緒的価値を持ち、誰のどんな心に突き刺さっているのか、考えてみよう。新しい発見が生まれるかもしれない。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年10月23日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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