人の話を鵜呑みにする人は意図がわかってない 情報はそれだけ不確かで本当や真実などない

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そう考えていくと、報道する理由などいくらでも見つかる。「交通事故の死亡者数」という淡々としたニュースであっても、そこには情報を発信する「動機・目的・メリット」があるということ。つまり情報に例外はないのだ。

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「マスメディアは自社の不祥事でも隠蔽せず報道することがあるのだから、『デメリットがあれば隠蔽される』とは言い切れない」という意見もあるかもしれない。確かに、自社の不祥事を報道せずに隠蔽したとしたら、隠蔽しきれなかったときのリスクは計り知れない。バッシングにさらされ、報道機関としての信用も失われ、信用回復に何年もかかる可能性すらあるだろう。

つまりそう考えれば、隠蔽せずに潔く報道してしまったほうがよほど合理的だということになる。隠蔽するメリットと、しないメリットとを比較し、よりダメージが小さいほうを選択したとも考えられるわけで、だから例外ではないということ。

だとすればそれは「絶対にバレない不祥事は開示されない」という意味にもなるが、今の世に「絶対にバレない不祥事」など存在しないと考えるほうが自然だろう。その証拠にマスメディアのみならず、「企業が外部告発を受けて大ダメージを被った」というような事例は、さまざまな業界で起きている。

情報の正しい楽しみ方

そしておそらく、開示しないことのリスクをもっとも理解しているのは、それを間近で見てきたマスメディアであろうと小木曽氏は指摘している。

情報の本質に、個人もマスメディアもない。現実もネットも関係ない。右翼・左翼・権力・反体制・陰謀論その他「そういうもの」以前に、情報の本質は不変、すべて単なる情報です。「メリット」「バイアス」「隠蔽」……こういったモノから逃れることはできないのです。(33ページより)

それを理解したうえで、「同じネタを伝えているのに、なぜメディア各社の報道内容が違うのか」と考えてみることが重要で、面白いということだ。

とくに政治系のニュースの場合、見出しを並べてみるだけで「これは○○新聞だろう」「これは○○テレビかな」などということがわかるものだ。それどころか、ニュースに使われる政治家の顔写真ですら、比較してみれば表情や陽の当たり方がなんとなく違っていたりする。

したがって、なぜその写真を選んだのかなど、「違い」に思いを巡らせることこそが情報の正しい楽しみ方だということだ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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