人の話を鵜呑みにする人は意図がわかってない 情報はそれだけ不確かで本当や真実などない

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言われてみれば、日常的にインターネットを利用しているわれわれが、必ずしもそのことについて知っているとは限らない。むしろ、知らないまま使っている人のほうが多いかもしれない。そこで、「人間にとって情報とは何か」についての答えを確認し、情報リテラシーの基礎を身に付けようというのだ。

情報の正体とは?

まず印象的なのは、第一章の冒頭における小木曽氏の主張である。実は「情報」と呼ばれているものの中に、「本当の〜」「真実の〜」と呼べるものは存在しないというのだ。

それは、「インターネットに書かれた情報は信用できない」というような単純な話ではない。すべての情報、テレビのニュースや新聞記事、職場の噂話、電車内で聞こえてくる会話、家族や友人の口に至るまで、すべての情報には“本当”も“真実”もないということである。

そもそも情報とは例外なく、「誰かの手」によって生み出されるものだ。発生した「できごと」や「事象」を、「誰か」が「誰か」に伝えることによって、初めて情報と呼ばれるわけである。当たり前のようでいて、これは非常に重要なことだといえる。

もし、あなた以外のすべての人間が死に絶え、地球に存在するのはあなただけ、他に誰もいなかったとしたら? そんな状況でたった今、あなたの目の前で富士山が爆発しました。大噴火、とんでもない事態です。でも地球にはあなた一人しかいません。いったいこれが何を意味するのか。(16ページより)

この場合、その大噴火は本人が認識できる範囲内で起きた単なる「出来事・事象」でしかない。伝えるべき相手がいない以上は、情報としての価値が成立しないからだ。つまりその状況は、ほかの誰かに伝えることによって初めて「富士山の大噴火」という情報になるということである。

情報が「誰かに伝える行為」であるならば、そこには必ず「情報の発信者」である人間が必要になる。ところが人間にはそれぞれ多様性、個性がある。冷静な人がいる一方には、慌て者や大げさな人、引っ込み思案な人もいるわけだ。

そして当然のことながら、その個性は、当人が発信する情報の中にも組み込まれることになる。「富士山の大噴火」という出来事に対する感じ方も、そのの伝え方も十人十色。いわば本人次第。しがたって、1つの情報が複数に人間によってまったく同じ表現で伝えられることなどはありえないのだ。つまりは、それこそが情報。

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