複雑な労務問題を抱えたJAL、経営側の「労組分断策」が再建の足かせに

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年金カットは既定路線?

民主党政権の誕生で幻に終わったJAL・国土交通省合作による経営再建案では、企業年金の切り下げが目玉となった。そして、民主党・タスクフォースによる再建案には2500億円の債権放棄が盛り込まれているが、この大前提としてまたも年金カットが求められている。

厚生年金の代行返上で利益を捻出した07年3月期末時点ですでに、JAL幹部は「売却資産がなくなれば、最後は年金の切り下げがある」と語っていた。経営陣は民主党政権誕生のかなり前から年金カットを視野に入れていたことになるが、労組には直前まで持ちかけていない。

年金カットをめぐっては、7月に時事通信が「日航の企業年金583万円」と題した記事を配信したのを皮切りに、複数メディアで年金が高額だとする批判記事が掲載された。いくつかの媒体には受給者団体が抗議したもようだ。ただ、減額を言い出したのは西松社長だけに、社内でも「労組への根回しが済まないうちに、霞ヶ関で年金カットを約束してきた西松社長による戦略ミス」との声が強い。

年金カットには受給者と待機者が合計9000人いるうち3650人が反対し、削減案白紙化に必要な「3分の2」を目がけて増え続けている。一方で、年金基金の解散は積み立て不足を埋める必要が出てくるため、今のJALには荷が重すぎる。

JAL再建論議はタスクフォース主導で進み、会社は当事者能力を失いつつあり、労組はただ年金カット阻止を叫ぶだけ。JALの巧妙な組合分断政策も、闘う労組も今やすっかり霞んで見える。
(東洋経済HRオンライン編集部)

 

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