複雑な労務問題を抱えたJAL、経営側の「労組分断策」が再建の足かせに

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大久保勉、峰崎直樹の両参院議員はJAL問題の論客として知られ、日銀出身で内閣府副大臣(金融担当)の大塚耕平氏はJAL問題の決着を政権奪取前から公言していた。そして、前原誠司国土交通大臣が9月24日、西松社長による公的資金注入の要請を一蹴した。公的資金注入に備えて準備した再建計画案は国土交通省とJALが練り上げたものだけに、JAL内では労使ともに緊張が走った。

そして、民主党が発足させた「JAL再生タスクフォース」が、JAL労使にとって共通の敵になりつつある。というのも、タスクフォースのメンバーは産業再生機構出身の冨山和彦・経営共創基盤取締役らと「強硬派」と目される前原国交相に近い奥総一郎氏。しかも、資金調達ではなく資産査定を急いでいる。金融業界や株式市場が「法的整理」を意識し、株価は上場来安値の100円(10月16日)まで下落した。JALは銀行との個別交渉を事実上封じられており、社内では労使とも「再生機構OBの実験台にされる」との警戒感が強い。

JALは2011年度にかけて借入金返済などで6000億円の資金需要があり、民主党の一部からは「わざと議論集約を遅らせ、JALが資金ショートして自ら裁判所に駆け込むのを待てばよい」という声も聞こえてくる。

JALの全8労組はタスクフォースとの意見交換の場を設定するよう求めているが、西松社長はこれに対して難色を示し、「直訴するような行動は慎重にしてほしい」と、労組をいさめている。

経営再建論議で、民主党から蚊帳の外に置かれつつある労組だが、巻き返しを試みてもいる。最大労組のJAL労働組合は10月、上部団体である連合を通じて会社側とともに民主党にJALの「破綻回避」を申し入れたもようだ。JAL労組(旧全日本航空労働組合)の元幹部で連合政策局長の経験を持つ名井博明氏が橋渡し役になったとみられる。組合側も経営陣も、法的整理や会社解体だけは絶対に回避したいという点で団結しているのだ。

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