その田中氏を、突然の出来事が襲った。他社との合併が決まったのだ。田中氏にとっては、まさに寝耳に水。自分の金城湯池だった担当エリアの営業は、他に任されることとなり、これまでのやり方が通用しない企画部門に異動となった。企画部門なのだから、本来であれば降格でもなんでもない。
しかし、これまでに染みついたスタイルは変えられず、プライドも邪魔してうまく適応できなかった。新しい上司も元スターの扱いに苦慮、かつての看板選手は、まるで「プライドだけは1級の、元アイドル」のような人材になっていた。
転職活動で不採用の連続!なぜそうなったのか
結局、自ら勤めていた会社を辞め、転職を決意した田中氏だが、かつてのエリートである自分が、今度は「不採用の連続」に驚くことになる。
なぜそうなったのか。どの会社も、事業展開の動きが激しくなっているため、「単なるA級の社内エリート」というだけではダメ。転職業界でも、環境変化を経験していない、『変化力』のない人材は敬遠される傾向が年々強まっているからだ。特に人気業界や、前職でのスタープレイヤーは、なまじプライドがあり、仕事のスタイルも変えられないことが多いため、適応できないことも多いと言う。
森本氏は「30代までにどれだけの環境変化を経験したかが、40代以降の飛躍を決める」と、断言する。そこで、器の大きさ、変化力の基礎ができあがるのだ。変化は転職に限らず、もちろん社内でも構わない。「スターでいるとき」こそ、いくつになっても、異動、赴任、出向など環境変化を厭わない心構えと準備ができているかどうかなのだ。
『変化力』が一つめのキーワードだとすれば、二つ目のキーワードは、『転職時のポジション』だ。肩書にこだわりすぎると、実は転職できても、入社後に孤立するケースが多いのだ。
多くのエリートが、「前職以上か、せめて同じポジション」を求める。課長、室長、役員…。響きは良いし、生活水準も下げられない気持ちもわかる。しかし、どんな業種でも、なまじ肩書があると、周りが身構え、「お手並み拝見」と斜めから見られるケースが多いのだ。プライドが邪魔して、相談もできず孤立し、2~3か月で退職に追い込まれる人も少なくないと言う。そうなると、次の転職先が、決まらない。
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