ピジョンも関わる「母乳バンク」の知られざる姿

ニーズ高く国際的に進んでいるが日本は牛歩

病院に行くと、まず、同会研究員で助産師でもある水野紀子さんが、母乳バンクとして利用している部屋へ案内してくれた。

「こんなに小さなところなんですよ」

冷凍庫を開けると、ドナーたちが全国から送ってきた冷凍母乳がぎっしりと詰まっていた(写真:母乳バンクで筆者撮影)

ドアを開けると、その1室は、確かに本当に小さな部屋で人が6~7人も入ればいっぱいになりそうだった。そこに全国から宅配便で送られてきた冷凍母乳を入れる冷凍庫と解凍のための冷蔵庫、低温殺菌機、クリーンベンチ、そしてドナーのファイルをしまう保管庫などが所狭しと並んでいた。

紀子さんが冷凍庫のふたを開け、中の引き出しをざっと引くと、そこには冷凍母乳がぎっしりと詰まっていた。ドナーは母乳に最近予防接種を受けたり薬を飲んだりしていないかを報告する送付票をつけてくるが、余白にはドナーミルクを待つ親子へのメッセージを書いてくる人も多いという。

ドナーを志願する女性は多く…

ドナーは事前の医師面接や血液検査を求められるにもかかわらず、母親同士で助け合いたいという気持ちから志願する女性は多い。2017年の協会設立以来、ドナー登録の申し込みは200人を超える。しかし現状では対応に限りがあるため、今はつねに志願女性をお断りしている状態だ。

送られてきた冷凍母乳は、解凍後、クリーンベンチの中で検査用サンプルを採取した後、特製の低温殺菌機で62.5度を30分間保ち殺菌する。こうして処理された母乳は再び冷凍され、検査結果を待って病原菌がなかったと確認できると、安全なドナーミルクの出来上がりだ。

(左)母乳が開封され、これから検査や殺菌が始まる、(右)母乳の重要な成分を最大限に残す低温滅菌機。これは試作された国産機で、今後母乳バンクが普及すれば製品化される(写真:ともに母乳バンクで筆者撮影)

低温殺菌機に母乳がセットされたころ、母乳バンク協会代表理事の水野克己さんが検査の結果と検査費用の請求書を片手に現れた。

水野さんは昭和大学4病院の小児科を統括する極めて多忙な身だが、母乳バンクを立ち上げた仲間たちと力を合わせ、この一室から全国のNICUへと安全・安心なドナーミルクを送り出してきた。

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