ピジョンも関わる「母乳バンク」の知られざる姿 ニーズ高く国際的に進んでいるが日本は牛歩

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こうした状況の中、11月19日、総合育児用品メーカーの老舗であるピジョンは、日本母乳バンク協会を経済的に支援していくことを発表した。

また本社1階の一部スペースを同会に提供し、2020年春より国内2つ目の母乳バンク「東日本橋 母乳バンク」として使用してもらう。現在のバンクが年間80人の赤ちゃんにしか対応できていないのに対し、新バンクは年間200人に応えていく予定だ。

ピジョン経営企画本部チーフマネージャーの山口善三さんによると、同社が母乳バンクに注目したきっかけは、海外事業の中で母乳バンクの存在に気づいたことだった。ピジョンは現在売上高の約6割を海外が占めており、海外進出に成功したジャパン・ブランドであることは有名だ。

社会貢献事業としてふさわしい事業

中でも大きく成功した中国市場開拓の功労者で、この4月に帰国して代表取締役社長に就任した北澤憲政氏が「日本には母乳バンクが整備されていない」と気づいたことが支援のきっかけとなった。母乳バンクは20世紀に欧米から始まったものだが今ではアジアにも広がり、中国でも、最近、母乳バンクが続々と新設されているという。

母乳バンク協会は、医学的に必要な赤ちゃんは経済力を問わず誰でもドナーミルクがもらえるようにと無償で母乳を送り、一定量の母乳を送っている病院からもらう契約料のみを財源としてきた。しかし、支払ってくれる病院は国立成育医療研究センター、聖隷浜松病院などの先進的な病院のみで、なかなか数が増えない。

ピジョン経営戦略本部の手塚麻耶さんは「先進国の中で日本の早産児だけがドナーミルクをほとんどもらえていない実情を知って、われわれは動くべきだと判断した」と言う。「社会貢献事業としてふさわしいもの。今は目先の利益だけを追求するようでは社会から評価されず、優秀な若者たちにも選ばれない時代だと思う」。

その母乳バンクの現状はどうなっているのか。

現在、国内唯一の「母乳バンク(東京・江東区)」を訪ねた。

母乳バンクは、日本母乳バンク協会代表理事で昭和大学小児科学教授の水野克己さんが、昭和大学江東豊洲病院の一室に設けた。ドナーや受け手の条件、母乳の処理方法などは、北米・イギリスなどの例を参考にして、国際的に見てもとくに厳しい基準を定めた。

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