「出生前検査」への意識、認証施設拡大で変わるか 妊婦が1人で悩むことのないよう全面的に支援

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日本医学会の運営委員会が出生前検査の認証施設として、新たに204の医療機関を認めました(写真:pearlinheart/PIXTA)
今の日本には、高齢出産の増加などから胎児の病気を心配する声が多く、妊婦の血液で胎児の染色体を調べる「検査」で悩む人がたくさんいます。
そんななか、日本医学会の運営委員会が「NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査:Non Invasive Prenatal genetic Testing)」の認証施設として、新たに204の医療機関を認め、9月26日から検査ができるようになりました。ここには産科の医院も含まれ、妊婦たちの身近な場でNIPTが始まりました。
検査を受けられる施設の拡大は、妊婦にどんな意味をもたらすのでしょうか。厚生労働省NIPT等の出生前検査に関する専門委員会の委員で、『出生前診断 出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』などの著書がある、出産ジャーナリストの河合蘭さんが解説します。

全国373施設が認証施設に

日本医学会の運営委員会が増やしたことで、NIPTの認証施設は大学病院など、すでに稼働している169の基幹施設と合わせると373施設、旧制度時代の3倍以上になりました(認証施設一覧はこちら)。

この春には、すでに35歳未満の人を対象外とする年齢制限もなくなっているので、誰でも希望すれば、相談体制が整った認証施設でNIPTが受けられるようになったのです。

こうして検査が受けやすくなってくると、国や学会がNIPTを奨励するようになったのではないかと思う方もいるかもしれません。

しかし今回、認証施設が増加した意味は、「出生前検査の拡大」というより、「出生前検査に悩む人が相談できる体制の拡大」にあります。ネットには認証を得ず、専門医との連携もないままNIPTを行う施設の宣伝がたくさん出ているからです。

認証施設はNIPTを実施する施設に違いありませんが、ただ検査をするだけではありません。正規の施設としてNIPTを行うには、検査前後に十分な時間を割いて、中立の立場からていねいな説明をすることがマストとなっています。実施件数や転機の報告も義務のひとつで、手間のかかるさまざまな業務を背負わなければなりません。

胎児の病気がわかったとき、人工妊娠中絶が選択される可能性のある出生前検査は、長年アンタッチャブルな領域とみなされ、適切な体制を整える動きが遅れていました。一方で、検査会社は新しい出生前検査法を開発すると、事実上、自由に医療施設と契約して検査を行うことができるので、技術は医療現場に入っていくことができました。

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