超音波検査や羊水検査などには技術がいりますが、NIPTは血液を採って検査会社に出すだけですから、特別な知識や技術はいりません。そもそも日本には、出生前検査のあり方を規定した法律などありませんから、どの医療施設がどう出生前検査を行っても違法ではありません。
その結果、検査前後の相談もなく、結果もメール連絡のみなど簡単な形をとる「無認定施設」が現れ、2010年代後半に全国へ広がりました。NIPTコンソーシアムの調査によると、2020年にその数は正規の認証施設を上回り、検査数も増加。その結果、心配な検査結果だった妊婦が、正規の施設へ駆け込むケースが目立つようになります。
旧制度では、染色体疾患や遺伝学の専門家がいる施設にNIPTの実施を限定していたため、認証施設はなかなか増えませんでした。一方で、無認定施設は、認証施設の空白地域に住む妊婦や、年齢制限で受けられない34歳以下の妊婦などをネット広告で集めていきました。
そうした施設の医師は、胎児にも妊婦にも縁のない内科医が多いといわれています。産科医は自分たちの学会が学会指針で出生前検査のあり方を示してきたので、ほとんどの場合で認証制度に従いましたが、それに縁遠い医師たちには、検査を実施するハードルが低かったようです。
結果がもし陽性だったら…
都市部では、私が知る範囲では受診者の半分くらいが無認定施設でNIPTを受けています。多くは34歳以下だったり、仕事と子育てで超多忙だったりする女性たちです。こうした施設はネットですぐに予約がとれます。
ただし、誰もが言うのは「私は、たまたま結果が“陰性(異常なし)”だったのでよかった」ということ――。「もしも“陽性(異常あり)”だったら……」と考えた瞬間に話はがらりと変わります。
NIPTで陰性と判定されないケースは、どの程度あるのでしょうか。日本人妊婦のデータを蓄積しているNIPTコンソーシアムによると、50人に1人の割合で陽性、もしくは判定保留となっています。
私がこの夏、妊娠・育児のサイト「ベビカム」で35歳以上の母親に行ったアンケートでは、「出生前検査で病気が確定したとき、カウンセリングは必要か」という問いに、「とても必要と思う」と回答した人は79%、「ややそう思う」と回答した人と合わせると94.5%にのぼりました。検査前の説明も、必要と思う人の合計が86.3%となりました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら