学校に「先生!」と電話をかける前にすべきこと 客観的事実を集め、解決につなげる

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次に、学校側にこの事態を伝えます。

適切な対応をしてくれる学校であれば、さまざまな配慮をしながら、いじめられた生徒、第三者、いじめた本人に聞き取りを進め、きちんと事実確認を行ってくれるでしょう。

ここまで来てやっと、どんないじめが行われたかが明るみに出てきます。いわば解決のためのスタート地点です。

もし行われたことが恐喝や暴力などの犯罪であれば、すぐに警察に介入してもらうことも必要でしょう。命に関わる問題であれば、なおさら速やかに大人が介入しなければなりません。

確実にいじめられた側の子どもを守ることが最優先ですし、積極的に大人が関わりながら、いじめた側を正してあげたいと私は思います。いじめられた側が泣き寝入りをしないですむような、解決を目指していかなければなりません。

遠慮なく学校や教育委員会と連絡を取ろう

こういった「いじめ」問題以外にも気になることがあり、学校側に意見を伝えたいと思うこともあるでしょう。

本来であれば、学校と保護者はそのような意見を交換し、対話できるような信頼関係を築くべきだと思いますが、難しいと感じている保護者の方も多いと思いますので、ここでは学校に保護者の意見を聞き入れてもらうコツをいくつかお伝えします。

① 伝えたいことを、事実、推測、伝聞のどれにあたるのか、可能な限り切り分けを行っておく
②信頼できる先生を探す(担任でなくてもOK)
③いなければ校長、副校長など管理職へアプローチする
④それでも対応してくれない場合は管轄の教育委員会へ連絡する

前述のとおり、まずは伝える情報の切り分けを行います。そして可能な範囲で、お子さんにも詳しく情報を聞いてみてください。

これは、確証がないのであれば相談してはいけない、ということではありません。学校側としては、事実確認をしておかなければ対応が進められないため、確実に学校に対応してもらうために必要なことだと思っていただければ、ありがたいです。

そして相談する人を探すわけですが、担任である必要はないので、安心して相談ができ、またしっかり対応をしてくれる先生を探してみてください。そういった先生がわからない場合は、迷わず校長や副校長に相談しましょう。校長、副校長に相談しても残念ながら事態が進展しない、または十分な対応をしてもらえないと感じた場合には、遠慮なく管轄の教育委員会(市区町村の教育委員会)へ連絡しましょう。

『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

もし管轄の教育委員会が対応してくれないときは、ご自分の住んでいる自治体の窓口(「市民の声」「区民の声」など)に連絡してみるのもいいでしょう。

校長に連絡するのは気が引ける、ましてや教育委員会へ連絡するのは……、と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。問い合わせのせいで自分の子どもが不利になるのではないかと、不安になる方もいらっしゃるでしょう。もちろん、実際には不利になったりすることはありませんが、どうしても不安な場合は、匿名で電話をしてみてください。

その際のポイントは、要件の後に「○日にまたお電話しますので、結果について教えていただけますか?」と伝えておくことです。これで、個人が特定されることも、相談事が放置されることもありません。

保護者の方が、遠慮なく学校や教育委員会と連絡を取り合えるのが健全な関係性です。保護者と学校、教育委員会は、対立関係にあるのではなく、子どもの成長を一緒に支援していく関係のはずです。何かあった場合には各機関に相談し、信頼できる人をぜひ見つけてください。

工藤 勇一 横浜創英中学・高等学校校長

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くどう ゆういち / Yuichi Kudo

横浜創英中学・高等学校校長。1960年山形県生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒。山形県公立中学校教員、東京都公立中学校教員、東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会教育指導課長などを経て、2014年から千代田区立麹町中学校長として宿題廃止・定期テスト廃止・固定担任制廃止などの教育改革を実行。2020年より現職。教育再生実行会議委員、内閣府 規制改革推進会議専門委員、経済産業省 産業構造審議会臨時委員など、公職を歴任。著書多数。

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