駅の中では列の生産性をあげる工夫が求められます。床には大きくペンキで、上り、下りのレーンを色分けすべきです。中央には安全な範囲内において、道路でよく見られるオレンジ色の蛍光色のセンターポールも立てるという手がありそうです。
「降りる人は青いレーンからはみ出さないでください。上る人は赤いレーンからはみ出さないでください」
そのアナウンスもうるさいぐらいに繰り返したほうが効果はあるはずです。
それに加えて「動きが遅い文化」への対策として階段付近では、家電量販店でよく流れているアップテンポなBGMもついでに流す。あの音楽には乗客の気持ちをハイにさせて人に行動を促す効果があるそうです。そうやって新大久保の駅の構内だけは、外国人にとっても生産性が必要な別世界であることをはっきりとさせたほうがよさそうです。
真剣に考えないほうが楽なタイプの難題がある
でも本当にお伝えしたいのは、この解決案でも新大久保の問題はまだまだ解決には至らないのです。たぶん。
これはこんな一見ささいな問題を新連載の1回目のテーマとして取り上げた理由とリンクしています。新大久保駅の混雑は「簡単に見えて簡単な問題ではない」ものですが、それに加えて世の中には「難しいので、その解決を真剣に考えないほうが実は楽だ」というタイプの難題もあるのです。
訪日外国人がどんどん増えていく未来では、新大久保だけではなく日本中にこのような現象が増えていく。これはいわゆるオーバーツーリズムの問題の先端事例です。しかもそれは目の前の問題を解決しても、すぐに観光客の規模が増えて結局は解決にならなかったりします。
逆説的に言えば、新大久保の問題は「混雑にうんざりするのでみんなが駅を使わなくなる」状態を目指したほうが解決は早いかもしれないという考え方も、問題解決の思考法としてはアリなのです。
そして実はこのような「解決が難しい社会問題」は世の中にあふれているのです。だから問題を理屈で解決しようと考える若者にはもう1つ、「その問題は解決できるのか、それとも解決を後回しにしたほうが楽なのか」を見極めるスキルが重要になります。
そんな問題を取り上げながら、世の中の災難や理不尽を乗り越えるためのスキルを考えていきたいのがこの連載。若い読者の皆様からも解決が難しい問題をお待ちしています。
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