ところがその状況が変わり始めたのは訪日外国人が増加した2010年代に入ってから。TOKYOを代表する注目の観光エリアである新大久保駅の乗降客数はどんどん増加するようになり、2018年にはJR東日本で最も乗降客が増えた駅になりました。乗降客数は前年比6.7%増、一日5.1万人まで増加したのです。2009年頃と比べると5割近い伸びです。
一方でもともと新大久保駅は山手線開業の後からできた駅で、線路の途中に無理やり作られたホームは幅が狭く、改札は1カ所、改札からホームに向かう階段は左右2つという最小限の出入り口しか用意されていません。そもそも山手線の中では鶯谷駅の次に乗降客が少ない駅だったことからそれでよかった時代が長く続きましたが、ここ数年で明らかにそのインフラと需要が乖離しました。だから冒頭にお話ししたような異常事態が起きているわけです。
JR東日本では2020年春に駅に新しい階段と改札口をオープンさせる工事が進んでいるのですが、ここまで需要が増えてしまうとそれが完成してもピーク時の乗客はさばき切れそうにもありません。ここが今回の講座の着眼点で、一見わかりやすい解決策がおそらく簡単には解決には結びつかないのです。
JR東日本は「できる範囲で階段と改札口の数を増やす」というわかりやすい対策に手をつけているのですが、そもそも乗降客数がここまで増えてきた状況で、それだけの設備増強ではなんともならない。これはJR東日本が発表している駅の改造計画の図を見ると、すくなくとも地元の利用客には容易に想像がつく状況です。ではどうすればこの状況を変えることができるでしょうか。もう少し理屈でこの問題を分析してみましょう。
私の観察によればこの異常事態、乗降客数が一日5.1万人に増加したこと以外にも2つの要因が組み合わさって引き起こされています。つまり乗降客数の異常な増加を含めると3つの理由が複合して起きている事態です。そしてこの問題、新しい出口の新設だけでは解決できないとすれば、残りの2つについても対策を考えないと解決には至りません。
大混雑の理由、2つ目は…
さて、新大久保駅の改札からホームに上がるまでの大混雑の2つめの理由はというと、これはすでに本文にそれとなく書いてあるのでもうお気づきの方もいらっしゃるのではないかと思うのですが、大混雑の列の幅が等幅になっていないことです。
駅に入る際に3つの自動改札を抜けた人波が、そのまま3列でホームに向かい、階段も3列で上がってホームに抜ければ、行列は最速でホームまで上がっていくことができます。ホーム上では人波をそこで立ち止まらせずにさらに遠くに追いやっていく必要があり、そうすれば最速時間で人波はホームに上がることができる。
ところが実際のラッシュ時の駅では自動改札を抜けた人波はいったん、幅10列ぐらいの人混みに膨れ上がります。それがゆっくりと階段を上がるのですが、階段の上には同様に降りてくる人混みが膨れ上がっていてホームに出られる太さは人1列分。逆にホームから改札に向かう人は幅10列ぐらいに広がった形から階段を5列ぐらいふさいで下り、やがて改札に出るころには1列にまで狭くなっています。
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