これは形で言うとちょうど「じょうご」を上下に重ねたのと同じで、入り口部分に人がたくさんいても、じょうごの出口が狭いため出口の分しか人を出すことができません。
だとすれば列の構造を変えることが解決案になります。ホームから改札へ向かう人混みを仕切りで仕切ったり、何人かの駅員さんで整理をして列の幅が均等になるようにすることで上り下りとも今の三倍のスピードで人の列を流していくことは論理的には可能です。
ただ、そのために駅員さんを増員するのはコストがかかるという問題は残ります。そしておそらくこのパズルのような明快な解決策を用いてもまだこの問題は解決しきれない。それは「乗客が駅員さんの誘導に従ってくれるか」というもう1つの問題が残っているからです。
生産性などに興味を持っていない
新大久保の駅を乗降するたびに、うんざりしそうなほど混雑した乗客の列に混じって人々の様子を見ていると、混雑に3つめの理由があることに気づかされます。通勤や仕事でこの駅を利用する人はなんとか人の流れの生産性を上げて、早く駅のホームにたどり着きたいと思うのですが、人混みの中の半数ぐらいは、そんな生産性などに関心はなさそうなのです。
そもそも首都圏の普通のJR東日本の混雑駅の場合、定期券で改札を通る乗客とそうではない乗客の比率は半々か、若干は定期券の乗客が多いというのが通常です。しかし新大久保駅は観光駅的な性格のために定期券を利用しない乗客が5.1万人のうち3.2万人と安定過半数を占めています。しかも私が冒頭でお伝えした状況は土曜日の午後、つまり乗客の大半が観光客という時間帯に起きている混雑のピークの話です。
それで改めて混雑を観察すると、そもそも駅の改札の外に待ち合わせをしている人々が壁を作って駅への出入りを妨げていることがわかります。
そして改札の中の乗降客の半数ぐらいには急ぐそぶりが感じられない。少なくともホームを降りてくる人たちはまったく急いでいない様子です。混雑した階段を乗降しながらも隙間なく下りることには関心を持たず、むしろ混雑に輪をかけるように歩きスマホや立ち止まりスマホで何か連絡をしています。「もう駅に着いたよー、あと少しだから待っててねー」とでも改札の外にいる友人に連絡を取っているのでしょう、たぶん。
また新大久保駅の特色としては、乗降客に外国人が多いことも挙げられます。韓国人だけではなく中国人観光客も同じくらいかそれ以上存在していますし、もう1つの街の特徴としてイスラム系の住人もとても多い。文化としては本当に多種多様ですが、彼らはおおむねのんびり歩きます。日本人に多い「少しでも早く動くべき」という文化は少数派なのです。
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