ダイバーシティ推進で大きく変わる日本型人事制度 第1回(全3回)
これを“遅い昇進・選抜”といい、日本型人事制度の競争促進メカニズムとされる。競争促進には年功制が必要であり、さらに年功制を成り立たせるためには長期雇用(高い雇用保障)が前提となるのはいうまでもない。もうひとつ重要なことは、年功制は、年齢・勤続年数という数字で表される非常に簡単に把握できる客観基準に基づいた制度であるという点だ。
このように素晴らしく効率的かつ効果的な日本型人事制度の前提となったのが、年齢・勤続年数に学歴・性別・国籍などを加えた属人的要素による人事管理であり、属人的要素によってコア人材と周辺人材を分けるという人事戦略であった。
この結果、設定されたコア人材の要件は日本人・大卒・男性の3点セットであり、これに当てはまらない女性や外国人などは周辺人材とされたのである。このように日本型人事制度は、ダイバーシティとは相いれないパラダイムの中で効率性・効果性を実現したものだったのである。
だが、グローバル規模の競争激化など競争環境の変化、少子高齢化の進展など社会環境の変化などにより、従来有効に機能してきた日本型人事制度は徐々に有効性を失い、ダイバーシティの推進が急務となってきたのである。
日本能率協会で人事専門誌『人材教育』の編集長等を歴任。英リーズ大学で人材マネジメント(HRM)の修士号、英バース大学で博士号(Ph.D)を取得。専門は人材マネジメント。2005年より現職。
社会人対象のMBA教育を行う同学科で、人材マネジメント、組織行動、リーダーシップなどの科目を担当。主な著書に『日本型賃金制度の行方』『HRMマスターコース』(いずれも単著)『戦略とは何か?』(翻訳)などがある。
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