離婚にあたっては、公正証書を作成することになった。夫は無気力だったため、すべての項目は恵子さんが1人で決めたという。内容は、「親権は母親が持つ」「夫が40万円の慰謝料と月4万円の養育費の支払い義務を負う」というものだ。養育費については、収入の低い夫に本来支払い義務はなかったものの、夫の言い値で構わないので検討してほしいと恵子さんは考えていた。
「生活のためではありません。将来子どもに、『あなたのことはパパとママ、2人で育てたんだよ』と言いたかった。誕生日やクリスマスのプレゼントも、パパとママからの贈り物だということにしたかったんです。だから5千円でも構わないから、子どもが成人するまでは夫にお金を入れてほしかった」
そう簡単には割り切れない
取り決めに関してはほぼもめることはなかった。2017年の秋に協議離婚が成立。現在、恵子さんと小学校1年生になった息子は2人で生活を送っている。しかし今でも恵子さんは、この離婚が正解だったのか思い悩むときがあるという。
「私と夫が不仲になったちょうど3歳頃から、子どもの頭に10円ハゲができはじめました。それは今でも治っていません。学校でからかわれたりはしていないようですが、もし私がもう少し耐えることができていれば……と、今でも自分の決断が子どもにとって正解だったのかがわからないんです」
また離婚にあたっては、世代が上の人たちから“呪い”のような言葉をたくさんかけられた。
「『父親がいないとしつけがなっていない大人に育ってしまう』とか、『父親がいないから、そんなに甘えん坊な子どもになっちゃったんじゃないの?』とか。でもそういう呪いから逃げ切れないと、離婚って決断できないと思うんですよね。
きっと子どもには子どもの社会があって、私たち大人がどんなに気をまわしても踏み込めない世界があるはずで。父親不在というネガティブ要因だけに引っ張られるようにして離婚を諦めるとしたら……、やっぱりそれはそれで大人のエゴなのかもしれないな、と最近では少しずつ考えるようになりました」
冒頭でも記したが、夫婦2人のケースとは違い、子どもを持ったことで離婚へのハードルはぐっと高くなる。女性用掲示板サイトには、夫の愚痴や結婚生活の悩みを吐き出す専用のスレッドが日々立てられ、さまざまな夫婦間の問題が垣間見ることができる。それでも離れずに、「子どものため」という大義を掲げて何十年も添い遂げることを選択する夫婦もいる。
どちらが正しいかはわからない。ただ、恵子さんのリアルな言葉は、そんな夫婦生活を送っている人にとっても、ひとごととは思えないのではないだろうか。
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