大学生で起業なんて「絶対やめたほうがいい」 親と社会の期待を「サードドア」で超える
アレックス・バナヤン(以下バナヤン):2人とも、ありがとう。ところで、アンリさんの履いてるその靴、すごいね。僕のが普通の人用だとすれば、アンリさんのは特別な人用だね(笑)。
2人に聞きたいんだけど、独立してVCになったときに、いちばんの障害になったことは何かな? ブックツアーのために日本に来てから、多くの若い人にこう聞かれるんだ。「サードドアを開けるときの障害をどのように乗り越えましたか」って。
サードドアを開けるときの最大の障壁とは
佐俣:大学時代、VCが集まる飲み会に参加する機会があって、そのとき「なんで君はここにいるの?」と聞いてきた人がいた。その人は後の僕の師匠になってくれた方で、彼のファンドで1年ほど修業させてもらった。その人は僕にとって、アレックスにとってのチー・ルーやエリオット・ビズノーのような存在なんだ。
僕の失敗は、そんな出会いがあった後の2年間、サラリーマンをしていたこと。普通の企業でファーストドアを開けようとしていた。でも、あるとき気づいたんだ。今の仕事をしていたのでは、100年経っても、VCになりたいという夢には1ミリも近づけないって。
バナヤン:将来の夢と、そのときの仕事の延長線がずっと平行線になっていたってことだね。確かにそれはファーストドアだ。平行ならまだしも、その平行線の幅は、年を取れば取るほど広がっていっていたかもしれないね。
佐俣:確かに。それに挑戦することの怖さより、挑戦しないで人生が終わったときの恐怖のほうが大きかった。それで会社を辞めて独立したのが、僕の最初のサードドア。
バナヤン:そもそもファンドの資金はどうやって獲得したの?
佐俣:そこは君と同じだね。僕の師匠は、僕のサードドアのキーマンになる人だった。だからいつも彼の近くにいて、いろいろな人に会わせてもらった。僕は、いかに彼らに自分を覚えてもらうかだけを考えていればよかった。
バナヤン:「インサイドマン」だ。
佐俣:そう。独立当初のファンドの規模は4億円だったけど、今はそのファンドが18倍になっている。おそらく日本で一番倍率が高いんじゃないかな。
バナヤン:すごい、アリババにでも投資したの!? だからそんなすごい靴履いてるんだ(笑)。上杉さんに聞きたいんだけど、今の仕事についてご両親はなんて言ってる? 僕みたいに大学を辞めてないから、満足されているかな?
上杉:確かに、僕はアレックスみたいに両親の反対にはあってない。うちの親は息子に対して「こうしなきゃいけない」とか厳しいことは言わないので、自由にやらせてもらっています。でも周囲を見ていると、学生で起業なんて「やめたほうがいい」という親が圧倒的に多い。だから僕は親の世代にこそ『サードドア』を届けたい。そうすることで彼らの意識も変わるんじゃないかと思うから。