大学生で起業なんて「絶対やめたほうがいい」 親と社会の期待を「サードドア」で超える

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バナヤン:アメリカでこの本を出版して1年が経ったけど、実際に保護者の方がこれを読んで、子どもの成功を望むようになっている。逆に、子どものほうから親に対して「この本を読んで」と勧めるケースもあるみたい。

佐俣:大事な点は、この本がフィクションではなく、ノンフィクションだということ。僕はVCの仕事とは別に、学生への奨学金を出しているんだけど、高校生が何かにチャレンジするときは、親がいちばんの障壁ってことが多い。子どもをそそのかしている僕は、親からすると悪魔に見えているかもしれないね(笑)。

バナヤン:僕も同じかな(笑)。お互い、あんまり大きな声じゃ言えないけどね……。

日・米・中のスタートアップに違いはある?

バナヤン:ところで、日本のスタートアップコミュニティの中で、皆がリスペクトするような企業はある? 例えばアメリカでは、ソフトバンクはすごく魅力的だけど。

佐俣:日本でもソフトバンクはリスペクトされているけど、残念ながら、ビジョンファンド(ソフトバンクグループが設立したファンド)は日本の会社に投資したことがない。日本には、アメリカより小さい規模でも上場できるマーケットがあるからね。

バナヤン:なるほど。じゃあシリコンバレーと東京、あるいは中国のスタートアップのコミュニティって何か違いはある?

上杉修平(うえすぎ しゅうへい)/1998年生まれの大学2年生。2018年6月にSevenwoods Investmentにアソシエイツとして参画。同12月、同社が若手起業家に特化して作ったVCファンド「Upstart Ventures」の代表パートナーに就任。ファンド規模は1億円で、10~12社への投資を予定している(撮影:今井康一)

佐俣:シリコンバレーと東京で言えば、優秀さは同じくらいになってきたかなって僕は思う。ただ日本には、失敗した後にもう一回チャレンジするというカルチャーはあまりない。日本人にとって会社は「家」だから、絶対潰さない。VCとしては、うまくいかない事業ならクローズさせて次を考えてもいいと思うんだけど、そう言うと、起業家からは「僕たちを殺す気ですか!」と怒られる。いい、悪いではなくて、日本独特のカルチャーだね。

上杉:中国などとのスタートアップコミュニティと綿密に関わっているわけではないけれど、中国はどちらかというとアメリカに近い感覚があるんじゃないでしょうか。

佐俣:そうだね。中国もインドネシアもフィリピンもタイも、優秀な人は起業すれば報われるという自信がすごくある。再チャレンジの土壌もある。だから本当に挑戦したい日本人は、日本でなく海外で挑戦したほうがいいかもしれない。

バナヤン:どういうこと?

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