大学生で起業なんて「絶対やめたほうがいい」 親と社会の期待を「サードドア」で超える
佐俣:日本は今世界で3番目に大きなGDPを持っているけれど、これから人口が減り続け、今後20年で7位まで落ちるといわれている。でも、無視するには大きすぎる。アジアの小さな国なら、アメリカか中国を目指せばいいけれど、日本は、日本でやっても小さな成功ができちゃうっていうこと。
それに、日本のマーケットは、株式公開後の大きな挑戦を好まない。例えば日本で今一番成功しているのはメルカリという会社だけど、かつてのベンチャーも、上場するともう赤字を長く出し続けることは基本的にはできない。
でもメルカリの競争相手はアメリカという市場で、未上場でエクイティファイナンスを続けている。赤字の許容額が違うんだ。つまり異なるルールで同じゲームをしているようなもの。これは本当に挑戦したい人にとってはすごく難しい。
でも僕は、そこそこ成功できる日本というマーケットで多くの成功事例を作りたいし、そのような中でも本当に大きな成功をどうやって作っていくかが自分の中では大きなテーマなんだけどね。
バナヤン:今の日本にはどんな可能性がある?
佐俣:日本のテクノロジーを使った起業はすごく可能性があると思うよ。例えば尿一滴でがんを検出する会社とか、宇宙で船外活動するロボットを開発する会社とかに僕らは投資をしている。そういう注目されるべき、最先端の技術が日本にはたくさんある。
『サードドア』のあとにやりたいこと
上杉:アレックスは、自分のプロジェクトを成功させて、『サードドア』を出版して、今度はそれがアメリカのみならず世界的に広まっているんですよね。次の展開は何か考えていますか?
バナヤン:今の僕の目標は、この本のメッセージをより多くの人とどう共有していくか、ということ。「この世のすべてのすばらしいものは、7年から8年かけて成熟する」というスティーブ・ジョブズの言葉がある。
僕は7年かけてリサーチして、インタビューして、この本を書き上げた。次の7年間は、この本のメッセージをどう共有するか。その規模を広げていくための期間だと思っている。だから今年は、セカンドステージの1年目。
佐俣:執筆するのはすごい大変な作業だったでしょう。僕は、自分が挑戦しているときはとにかく必死で、人にそれをシェアしようという余裕なんてなかった。でも山頂にたどり着くための登り方をシェアしたほうが、皆が幸せになれる。アレックスは20歳くらいでそれに気づいているんだから、尊敬するよ。
バナヤン:書き始めた当初は、自分の知っていることをできる限り書き込もうと思っていた。でも書き終わってみたら、目的が変わっていたんだ。次の世代のみんなに、自分の可能性を信じてもらいたい。この本がそのきっかけになればいいって。